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供給制約は景気ソフトランディングの障害に

2022-01-31

■ IMFは2022年の世界経済の成長率見通しを引き下げ、景気回復ペースの鈍化はより明確に

■ 緩やかな成長減速が想定されているが、供給制約に対する有効な政策手段は見出せない


   国際通貨基金(IMF)は25日に昨年10月に発表した「世界経済見通し(World Economic Outlook)」を改訂した。2022年の世界経済の成長率は下方修正され、2021年の5.9%から4.4%への減速が見込まれている。新型コロナウイルスオミクロン株の感染拡大に伴う世界的な行動制限強化、原材料価格の高騰、製品・部材の不足・配送遅延による悪性インフレの進行、などが反映され、景気回復ペースの鈍化がより明確となった。個別では、1.75兆ドル規模の経済政策の効果が除外された米国と、不動産業の過剰債務問題や大企業・富裕層に対する締め付けにより景気減速感が強まる中国の引き下げが目立っている。

   他の指標でも世界的に景気回復ペースに陰りが見え始めており、コロナ禍以降の循環的な回復局面は曲がり角に差し掛かっている*1。政策支援に支えられ急回復してきた経済は下降局面へ移行する可能性が高まっており、景気を見通すうえでの焦点は今後の減速ペースに移っている。IMFは、巨額の政策支援により支えられてきた先進国を中心に、2023年にかけてさらなる成長減速を見通している。中国、トルコなど一部の国を除き、金融政策は緊急対応からの正常化や高インフレ抑制へ転じており、政策的に景気抑制効果が強まる点も、減速に寄与しよう。もっとも、各国ともに潜在成長率を上回る成長率見通しが保たれており、メインシナリオでは緩やかな成長減速(ソフトランディング)が想定されているようだ。

   多くの国が新型コロナウイルス感染防止と社会経済活動の両立へと政策方針を見直すなか、経済への影響は、対面サービス需要の落ち込みに限られず、原材料・製品の供給遅延、工場の操業停止、労働需給の不一致など、供給面での弊害も大きくなっている。これらの供給制約は物価高騰を促し、経済安定化を阻害する要因につながっている。財政・金融政策は需要の創出・促進には有効だが、供給面の問題を和らげることは難しい。新たな変異種感染が定期的に流行することが想定されるなか、供給制約の常態化は経済の中心的な課題となろう。これに対して有効な政策手段を見出せず、下支えを期待できないことが景気のソフトランディングシナリオに対する潜在的なリスクであると考えている。
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