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2022年2月1週目(31日~4日)の相場展望

2022-01-31

先週のFOMCでは、政策据え置き後のパウエルFRB総裁の定例記者会見で、予想通りよりややタカ派のコメントが多かったように思える。労働市場の改善が広くいきわたっており、賃金の伸びが物価に与えるリスクに関して言及、またインフレは長期目標を大きく上回っており、新型コロナのハンデミック問題が高インフレを起こしているという。ただインフレは年間を通じて低下すると予想しており、金融政策においては敏感に動くということでやや安心感も醸し出していた。バランスシートに関しては、縮小は予測可能な方法つまり市場と対話しながらの縮小度合となっていくようだが、かなりの量を縮小すると述べており、急速なテーパリングと捉えられそうだ。コア物価指数の22年予想を引き上げ、不足している半導体問題は23年以降も継続するという見通し。全般には、新型コロナの影響で労働市場の逼迫を促している点を強調していたように感じられる。

相場はFRBパウエル総裁のコメントからドル高、株安へ動き、それまでの上昇を打ち消してしまった。株価やドルは、ここ2週間ほどで前述の方向である程度織り込んではいたが、予想範囲内でもややタカ派と捉えられたことと、加えてウクライナ問題が背景にもあったようで、その方向に弾みがついたような相場付きとなっている。ロシアは実際ウクライナとの戦闘はもう何年にもわたって続けてきた。ロシア側からの侵攻の目的は様々なものが報道されており、本当の理由は判明していない。時期としてはウクライナの天候に左右されるようで、現地では2月から3月に掛けての時期に路面が完全に凍結し、ロシア軍の戦車や装甲車両が行動するのに最適となる。3月下旬から氷が解け始めると路面は逆に泥沼化して、車両の運用が事実上できなくなるという。つまり2月中旬から後の1か月程度の間に侵攻する最適な時期となる。ロシアは昨年末から侵攻の構えを見せており、西側への交渉手段とも考えられる。実行するかどうかは2月に入ってからの可能性が大きく、相場にとっては不透明な材料が一つ継続されることになる。

一応米国FRBの利上げが年内4回、合計1%~1.25%程度というコンセンサスのもとでドル高へ向かっており、円安も加味して動いてはいるが、この円安と一概に捉えるわけにはいかず、株安となるとリスクオフに目が向きやすく円高へ舵取りされてしまう。金利差から鑑みるとドル高円安、同じく利上げ方向の英国のポンド高円安となるが、欧州は米国とは逆で依然インフレ懸念を小さく見積もっており、金融政策スタンスが日本と近いのでユーロ安円安で打ち消されてしまう。円は各国通貨の動き次第で動きが変わってくると思われる。主要通貨ペアで売買高も著しく大きいドル円が上昇すれば影響が大きく、クロス円も上昇圧力がかかりやすいが上昇幅は相対通貨によって差が出やすいだろう。今週は、大きく下げた株式相場のショートカバーが出やすいととらえておりドル円は116円をターゲットに堅調推移と見ているので、全般円安傾向が強まりやすいと予想する。ショートカバーの度合いが弱く、ウクライナ情勢の変化によって株価が再び軟調となれば、115円を下回る可能性もあるため、外部要因からの影響を鑑みる必要があるだろう。ユーロドルもドル高の影響とECBの緩和スタンス維持で直近の安値を下回っている。下落トレンドラインを一旦は上回ったものの、ドル高に押し戻された感じだ。75日移動平均線をも下回り、25日移動平均線も下向きとなったため下げ相場継続となりそうだ。ただRSIが30%程度まで下げていることで、ここから下はやや底堅い感じも出ている。しかしユーロドルが反転上昇するには、75日移動平均線を25日線が上回る形となることが一つの目安となるだろう。ユーロドルの下値目途は1.1078で、それを下回るとトレンドラインの下値抵抗レベル、今週は1.0950-1.0980付近まで下押しする可能性が高い。上値は1.1220付近に抵抗があり、もし上昇するとしても1.13台まではやや時間を要しそうだ。

ユーロドル日足チャート


金価格も米国利上げに向けての思惑から先週下落に転じた。なかなか簡単には三角持ち合いをブレイクしない状況が続いている。ほぼ4度目の持ち合いライン接近で今回の下げは五度目の動きとなり、またレンジ幅が上下80ドル程度まで狭まっていることで、どちらかにブレイクする可能性は高まってきたので、テクニカルの面からみると要注意の週であろう。

金価格の日足チャート(XAUUSD)


また世界の株価の動きをリードしている形の米国ナスダック指数は、ダブルトップ形状を完成させ、想定以上の下落で昨年11月の市場最高値16769ドルから13719ドルまで約2ヶ月で約18%強下げた。高値から10%以上下げると調整局面が強まると言われるがその通りの動きとなり、10%下げのレベルである15100ドルからの急落も激しかった。個別ではネットフリックスが決算発表で下方修正し、一日で約20%下げたことも投資家への不安感を誘った。先週は流石にショートカバーが入り、金曜日は大幅な上昇となった。チャート面からは、先週の高値14654から14750付近を推移中であるATRチャネルの黄色線までの戻りを想定している。ここを上回ると底値不安が一旦和らぐと考えている。そこまで回復しない場合は、下値不安は払しょくできないままで下向き継続となろう。

ナスダック指数日足チャート


今週は重要な経済指標発表や中銀イベントが多く、欧州、英国、オーストラリアで政策金利の発表があり、ユーロ圏、フランスやドイツで消費者物価指数、米国ではISM製造業と非製造業景況感指数や雇用統計の発表が予定されている。米国の雇用統計が利上げの後押しとなるのかどうか、欧州でのインフレ懸念や各国の金融政策の行方など、ウクライナ情勢や株価動向も含め、目が離せない一週間となりそうだ。
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