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国内投信市場動向:2021年の傾向と2022年の対策

2022-01-26

■ 2021年の国内投信市場では、(1)海外株式への集中、(2)国内債券への資金流入が印象的

■ 2022年初めの市場環境から、「海外株式+日本債券」の分散投資に注目が集まると推測する


本稿では、2021年を通じた国内投信市場動向を振り返る。2021年の傾向は、(1)海外株式へ一段と資金が集中したこと、(2)国内債券は資金流入超だったのに対して、海外債券は資金流出超だったことの2点と考える。
2021年の市場全体の資金流出入は約9.7兆円の流入超過だった。このうち、海外株式へ投資するファンドへは総額約8.4兆円の流入超過となり、資金集中が進んだ。2020年の流入超過額は市場全体が約2.3兆円に対して海外株式へは約3.6兆円と、海外株式へ人気が集中する構図は変わらなかったものの、流入資金の規模が一段と大きくなった。また、日本株へ投資するファンドに対しては、2021年は約500億円の資金流入にとどまっており、海外株式への選好姿勢が際立っていた。主要資産クラスの2021年騰落率(インデックスベース)を確認すると、米国株(S&P500)は+26.9%の一方、日本株(TOPIX)は+10.4%にとどまり、今年も国内投資家の海外株式への選好姿勢は変わらないとみられる。
(2)は具体的に、国内債券へ投資するファンドに対して約6,500億円の資金流入超だった一方、海外債券には約3,600億円の資金流出超だった。一般的に、米国や豪州の債券よりも日本債券は金利が低いため、リターンが得られにくい債券と評価される。そうしたなかで国内債券への資金流入が進んでいるのは、日本債券の低リターンではなく、安定性への注目度が増している証左と考える。年明け以降、日本を除く主要先進国では利上げ実施見通しが急速に織り込まれているが、日銀は利上げが最も遅いとみなされ、金利上昇圧力は相対的に弱いと想定されることが大きな要素とみる。個別ファンド別の月次資金流入額上位を確認すると、月によっては国内債券ファンドのうち、「ラップ型」に組み入れられるファンドが複数ランクインしているケースが昨年後半にかけて散見された。また、2021年を通じたバランス型ファンドへの資金流入額は約5,200億円の流入超過となるなど、国内投資家の一部は徐々に分散投資に動き始めている可能性がある。年明け後の騰落率(1月21日時点)では、米国株(S&P500)がマイナス7.7%、日本株(TOPIX)がマイナス3.3%と株価の調整がみられる。「海外株式+日本債券」への分散投資に対する注目度が高まりやすい環境と言えるのではないか。

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