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欧州中銀:物価見通しの二極化が鮮明に

2022-01-24

■ 物価の上振れリスクへの警戒が想定より強い印象

■ 賃金・物価関連指標とECB中核メンバーの要人発言を注視


このところ、欧州中銀(ECB)理事会メンバーの間で物価見通しの二極化が鮮明になっている。昨年12月16日に開催されたECB理事会では消費者物価上昇率予測に関して、2022年が3.2%に、2023年が1.8%に、それぞれ9月時点(1.7%、1.5%)から上方修正された。ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、インフレは短期的に高い状態が続くが2022年中には低下すると予想していると述べ、資産買い入れを継続して景気を支援する姿勢を維持した。チーフエコノミストであるレーン専務理事は11日に、ユーロ圏のインフレ率が中期的に目標の2%を超えることはないとの見通しを示したほか、シュナーベル専務理事は14日、早すぎる利上げを実施すべきではないと述べるなど、金融引き締めに慎重な姿勢を示している。

一方で、デギンドス副総裁が13日に、今年のインフレ率はECBの予想を上回るリスクがあると語ったほか、独連銀総裁など複数の理事会メンバーはECBがインフレリスクを過小評価している恐れがあるとの見解を表明している。20日に公表されたECB理事会議事要旨(昨年12月16日開催分)では物価見通しに関して、2023年と2024年については目標の2%に比較的近く、予測の上方リスクを考慮すれば、容易に目標を上回る可能性がある、との警戒感が示された。ラガルド総裁は昨年12月の理事会後の記者会見で、インフレの上方リスクは存在する可能性があるとしていたが、議事要旨の内容からはこの発言よりも上方リスクが強く意識されていることが読み取れる。また、データや事実を踏まえ、必要となればいずれの方向にも金融政策手段を調整する用意があることを強調すべきとされており、賃金や物価関連の経済指標への注目度が一段と強まることが見込まれる。加えて、ラガルド総裁、レーン・シュナーベル両専務理事などが物価上昇の長期化への警戒感を示唆すれば、金融引き締めへの思惑が急速に強まる可能性があることから、これらECB中核メンバーの発言内容を注視しておきたい。
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