世界経済:コロナ禍以降の循環的な景気回復が一巡
2022-01-21
■ OECD景気先行指数には、世界的に景気のピークアウトのシグナルが点灯
■ 景気の「踊り場」への移行が見込まれ、金融引き締めの影響の有無を見極める必要性が高まる
2020年の新型コロナウイルス感染症のパンデミック以後続いてきた力強い成長は、多くの国・地域で減速の兆候がみえ始めた。
17日に発表された昨年12月の経済協力開発機構(OECD)の景気先行指数は、OECD加盟国全体(100.5、前月比0.06%低下)では5カ月連続で低下し、成長サイクルの見通しが「ピークの可能性(Possible peak)」から「安定的な成長(Stable growth」」へ引き下げられた。国・地域別では、米国(99.9、同0.04%低下)、ユーロ圏(100.9、同0.10%低下)、日本(100.5、同0.05%低下)など大半の国・地域で低下し、成長サイクルの見通しが「ピークの可能性」から「安定的な成長」へ修正され、ピークアウトを暗示した。ここ数カ月の低下ペースが速いドイツ、イタリア、英国、カナダ、中国では、「勢いを失った成長(Growth losing momentum)」へ明確な減速が見通されている。コロナ禍以降の循環的な景気回復が世界的に一巡しつつあることが指標に表れ始めており、過去1年余りの景気認識を改める局面に差し掛かっている。
もっとも、多くの国・地域では、指数の水準は成長トレンドの長期的な平均を示す100を上回っており、ここ数カ月間の指数の低下も緩やかなペースにとどまる。当面はトレンドを上回る成長が保たれることが示唆されている。景気のピークアウト後、直ちに景気下降局面に向かうのではなく、一時的な景気停滞を意味する「踊り場」局面へ移行する可能性が高い。
景気が「踊り場」から再加速するのか失速するのかは、今後の外部環境変化や財政・金融政策に大きく左右される。成長ペースに陰りがみえ始めたなかで金融引き締めが進み、政策的には景気抑制効果が想定される。実体経済に及ぼす影響の有無を見極めることが、一段と重要性を増しそうだ。