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日本株:自社株買いが割安感解消の手掛かりとなるか

2022-01-19

■ 事業法人の自社株買いが活発化することが期待される
■ 政策動向を注視しておく必要がある

  日本取引所グループが公表する投手部門別売買動向を確認すると、海外投資家は2020年に約3.4兆円売り越し、2021年には0.3兆円の買い越しに転じた。ただ、2018年から2020年まで3年連続で累計9.9兆円売り越した後とあっては、買いの力強さを欠く。また、日銀は2021年3月に上場投資信託(ETF)買い入れ方針を弾力化し、4月以降は購入額が急減。2020年は約7.1兆円だったが、2021年は0.9兆円に急減し、2012年(0.6兆円)以来の低水準となった。日本株を買い越す投資主体が不在となるなか、期待されるのが事業法人の動きである。

  事業法人の買い越しは自社株買いによるものであり、2018年の約2.6兆円から2019年には4.2兆円に大幅増となったあと、2020年は新型コロナウイルス感染拡大を受けて手元資金を確保するため1.3兆円に減少したものの、2021年には1.6兆円に増加している。自社株買いの原資となる企業の手元流動性は新型コロナ禍を経て急増しているほか、今年度の自社株買い設定枠は昨年11月に急増し、12月時点では2013年度以降の最高であった2019年度に匹敵する規模となっている。本邦主要企業の昨年10-12月決算発表は今月末近くから本格化する。個別企業の決算内容はもちろんのこと、自社株買いに関する情報発信にも注目しておきたい。日経平均株価の予想株価収益率は2021年初めには22倍台まで上昇していたが、14日時点で16.1倍となっており、新型コロナ禍前の2016年から2019年のレンジ(14-18倍)に回帰している。欧米より割安な水準にあり、自社株買いが日本株の割安感解消の手掛かりとなるか注目される。

  なお、岸田首相は昨年12月14日の衆院予算委員会で、自社株買いの制限は新しい資本主義を実現する観点から大変重要なポイントでもあると述べ、企業の自社株買いに関するガイドラインを作る可能性に言及した。仮に実現することとなれば、日本株の数少ない買い主体の行動を阻害することとなり、株価上昇への期待に水を差すことになりかねないため、政策動向を注視しておく必要がある。
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