中国経済:ゼロコロナ政策が内需復調を阻害
2022-01-18
■ 中国政府の景気下支え姿勢が明確になり、景気減速には歯止め
■ ただし、ゼロコロナ政策を堅持しており、新型コロナオミクロン株感染拡大が内需低迷に直結
本日、中国の主要経済指標が発表され、昨年12月分の経済指標が概ね出揃った。
本日発表された昨年10-12月期の実質GDP成長率(前年比プラス4.0%)は前期から一段と減速し、コロナ禍以降最も低い成長にとどまった。ただ、前期比ベース(プラス1.6%)では2四半期ぶりに成長が加速し、減速基調に歯止めが掛かりつつあることも示された。中国政府が大企業や富裕層に対する引き締め策の運用を柔軟化。また、中国人民銀行(PBOC)が預金準備率や実質的な政策金利である最優遇貸出金利(LPR)引き下げなどの金融緩和姿勢を強めており、景気下支え姿勢が明確になっている。
昨年12月の主要経済指標では、世界的に供給制約が和らぐなか、鉱工業生産(前年比4.3%増)の増勢鈍化には歯止めが掛かっている。一方で、新型コロナ感染拡大を受けて、小売売上高(同1.7%増)はコロナ禍以降最も低い伸びにとどまり、内需拡大ペースが鈍っていることを示唆した。不動産市場の調整が続くなか、固定資産投資(農村部除く、年初来同4.9%増)の鈍化傾向も続いている。金融統計をみると、PBOCの追加金融緩和政策により、マネタリーベース(同7.7%)増が1年ぶりの高い伸びとなり、市中の貨幣流通量を示すマネーサプライ(M2、同9.0%増)や社会融資総量残高(同10.3%増)の伸びも加速した。生産者物価指数(同10.3%上昇)の高騰に歯止めが掛かりつつあり、金融政策対応の余地が広がっている。
政策姿勢の変化を受けて景気急減速に対する懸念が和らぐ一方で、2月4日開幕予定の北京五輪開催を控えて、当面は、新型コロナウイルスオミクロン株感染封じ込めのための厳格な行動制限や、大気汚染を抑制するための環境規制が継続される可能性が高い。昨年12月8-10日開催の中央経済工作会議では「共同富裕」推進の方針が改めて示されており、中期的にも政策管理の下での緩やかな景気減速の流れは変わらないだろう。また、新型コロナ対応と経済活動の両立に舵を切る先進国と対照的に、ゼロコロナ政策を堅持する中国ではオミクロン株感染拡大が景気減速に直結しやすい。プロシクリカリティ(景気循環増幅効果)を有する政策が推進されている点は、景気に対する潜在的リスクとして引き続き注意が求められる。