ドル円相場:足元の調整は短期間で収まると予想
2022-01-17
■ ドル円は年初の116円台から113円台まで調整が進むが、円高基調には転じないと予想
■ 昨年9月下旬以降と足元の相場材料は似ており、徐々にドル円の底堅さが意識されるとみる
ドル円は1月13日に約3週間ぶりとなる113円台へ下落したが、この調整は短期間で収まるとみており、年末にかけて117円台へ向けて緩やかに上昇するとの見通しを維持する。本稿では、昨年9月から10月にかけてと直近の相場との類似性を指摘したい。直近では、1月5日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(昨年12月14日、15日開催分)公表などを受けて米長期金利は昨年末から約0.29%上昇。昨年9月もFOMCで利上げ実施見通しが2022年へ前倒しされ、10月上旬までに米長期金利は約0.27%上昇した。当時、ドル円は109円台前半から112円台前半へ上昇後、110円台後半へ調整。ただ、10月中旬以降は投資家心理の改善に伴い、10月高値(114円69銭)まで円安圧力が高まった。その時の背景は、(1)日本の貿易赤字拡大、(2)日米金融政策の方向性の違い、(3)米企業決算だったと認識している。当時ほどではないが、今回も同様の材料が確認されドル円は次第に底堅い展開に移ると予想する。
(1)は、エネルギー価格上昇が日本の貿易赤字拡大につながるとの見方が背景だった。1月20日に昨年12月の日本の貿易収支が公表予定であり、注目したい。情報会社Refinitiv集計の市場予想中央値は、7,841億円の赤字と5カ月連続の赤字の見込み。足元でWTI先物価格は昨年11月上旬以来の高値圏にあることも相まって、円高要因とはなりにくいとみている。
(2)では、1月17、18日に日銀金融政策決定会合が開催される。直近のエネルギー価格上昇の影響から、日銀は物価見通しを上方修正すると見込まれる。ただ、今すぐ金融政策の正常化へ向かうほどではないとみられるほか、1月13日発行のPRESIA Insight*1で示した通り、米連邦準備理事会(FRB)は一段と金融引き締め姿勢を強めている。日米金融政策の方向性の違いを確認する限り、このまま円高基調が強まる可能性は低いだろう。
(3)は、2月上旬にかけて米企業の昨年10-12月期企業決算発表シーズンに突入する。情報会社Refinitvの集計(1月7日時点)では、S&P500種構成企業の一株当たり利益(EPS)は前年比22.4%増と、昨年7-9月期(同42.6%増)から鈍化するものの、堅調な伸びが見込まれる。ネガティブサプライズが生じやすいとの警戒感はある一方、想定通りの利益成長が実現できれば投資家心理の改善につながり、ドル円のサポート要因となる見込み。