新興国中銀:今年の注目はブラジル・ロシア・メキシコ
2022-01-07
■ 2021年は、利上げに傾斜した南米と東欧、利上げの波が及ばないアジアとの傾向が続いた
■ 2022年後半にかけて、中銀の政策姿勢転換についてはブラジル・ロシア・メキシコに注目
本稿では、昨年12月の新興国中央銀行の動向を整理する。新興国の間で、利上げに傾斜している地域は南米と東欧、利上げの波が及んでいない地域はアジアという、2021年を通した傾向に変わりはない点が確認されている。
12月には、計12カ国(インド、ポーランド、ブラジル、チリ、ハンガリー、フィリピン、台湾、インドネシア、メキシコ、ロシア、コロンビア、タイ)の新興国中銀が政策会合を行った。利上げ実施は7中銀、据え置きは5中銀と分かれる結果に。南米と東欧地域の中銀は軒並み利上げを実施した一方、政策金利を据え置いたのは、インド、インドネシア、フィリピン、台湾、タイとアジア地域に集中。また、中国人民銀行は12月20日に、事実上の政策金利とされる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)の1年物を、3.85%から3.80%へ引き下げた。
12月は、2022年へ向けて複数の国で総裁を含めた中銀幹部のコメントも伝わった。なかでも、昨年に金融引き締め姿勢を積極化したブラジル(政策金利:2.00%→9.25%)とロシア(政策金利:4.25%→8.50%)、中銀総裁が交代したメキシコ(政策金利:4.00%→5.50%)に注目したい。ブラジルとロシアの中銀総裁は、物価抑制を目的とした今後の利上げ継続を示唆した。物価目標中央値は、ブラジルが前年比3.75%、ロシアが同4%と設定されているが、11月の消費者物価上昇率はそれぞれ同10.74%、同8.4%と、インフレ高進が続いており、今年前半の両国中銀は利上げ姿勢継続が見込まれる。ただし、物価上昇基調が鈍化に向かえば景気支援のために利下げに転じたいとの意向も示しており、今年後半にかけての物価動向次第では、高金利に誘引されブラジルとロシアの債券市場に資金が流入する可能性は考慮しておきたい。また、メキシコ中銀では、今年1月1日をもってディアスデレオン前総裁からロドリゲス新総裁へ交代した。前総裁は退任間近まで、2001年初め以来の高水準をつけている物価上昇率を抑制する姿勢を打ち出していたが、新総裁はロペスオブラドール大統領と関係が近いとされる。そのため、メキシコ中銀は昨年7-9月期に前期比ベースでマイナス成長に落ち込んだ景気を支えるため、政策運営姿勢が変わる可能性がある点に注意しておきたい。