ユーロ圏マクロ経済見通し
2022-01-03
■ 新型コロナ感染再拡大に伴い、内需が低迷
■ インフレ圧力が強まるなかでも、ECBは来年の利上げ開始に慎重な姿勢を保つ
ユーロ圏では、景気回復ペースの鈍化が明確となっている。11月以降、欧州各国で新型コロナウイルス感染が再拡大し、一部の国では経済活動が制限されている。ハードデータは未公表ながら、景気一致指数である11月のユーロコイン指数(0.16、前月比0.55ポイント低下)は1年ぶりの水準まで急低下。また、12月のPMI(速報値)は、製造業(58.0、同0.4ポイント低下)、サービス業(53.3、同2.6ポイント低下)ともに低下し、内需動向が反映されるサービス業での景況感悪化が目立っている。12月の消費者信頼感指数(速報値、マイナス8.3、同1.5ポイント低下)はコロナ禍以前の水準を下回り、消費者マインドの悪化も明確になっている。なお、世界的に供給制約の影響は和らぎ、10月の鉱工業生産(同1.1%増)は3カ月ぶりに増加。鉱工業生産の先行指標である11月のドイツトラック移動距離指数(同1.3%上昇)は3カ月連続で上昇し、景気回復の勢いが鈍るなかでも、製造業活動は底堅さを保っている。
内需が伸び悩む一方で物価上昇圧力は一段と強まっており、11月の消費者物価指数(HICP、前年比4.9%上昇)が過去最高の上昇を記録。財(同2.4%上昇)、サービス(同2.7%上昇)ともに上昇ペースが加速している。欧州中銀(ECB)は16日の理事会で、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を2022年3月末で終了するとともに、激変緩和措置として、既存の資産購入プログラム(APP)での購入額を2022年4月から9月にかけて、一時的に増額することを決定した。スタッフマクロ経済見通しでは、2022年の物価見通しが大幅に引き上げられたものの、2023年以降はインフレ目標以下の水準に落ち着くことが見通され、2022年中に利上げを開始することには慎重な姿勢を保った。ただ後日、多数のECBメンバーが物価上振れへの警戒感を強めていたことが明らかとなっており、今後もECBの金融政策正常化観測はくすぶることが見込まれる。