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新興国通貨:2022年は貿易収支と実質金利に注目

2021-12-31

■ 2021年の新興国通貨は、中国人民元・ロシアルーブルが堅調だった

■ 米ドル高が進むなか、新興国通貨上昇には貿易黒字傾向と実質金利のプラス化が必要とみる


   本稿では、新興国通貨の2021年の動向を整理する。2021年の主要新興国通貨の状況を対米ドルの騰落率(12月29日時点、Refinitivより)で確認すると、中国人民元が+2.4%と最も強かった。続いて、ロシアルーブルが+0.2%と、米ドルに対して上昇。米ドル自体、2021年は主要先進国通貨の間で最も堅調だったこともあり、新興国通貨のなかでは、上記2通貨の強さが際立っていたのが印象的だった。
   通貨上昇の要因は、貿易黒字の拡大傾向が挙げられる。中国は世界経済の回復に伴い、今年1-2月の貿易黒字額が過去最大の1032.5億米ドルまで拡大した後、直近11月でも717.2億米ドルと高水準を維持している。ロシアも下期以降、輸出の太宗を占めるエネルギー資源の価格上昇を背景に貿易黒字額が急増し、7月に231.9億米ドルと過去最大規模に膨らんだ後、10月も197.8億米ドルと高水準にある。
   他方、対米ドルで下落率が大きかったのは、トルコリラ(マイナス70.0%)とブラジルレアル(マイナス9.8%)だった。こうした通貨の下落要因としては、実質金利(政策金利-物価上昇率)のマイナス幅拡大が挙げられよう。トルコは物価上昇の伸びが前年比21.31%まで加速するなか、政策金利を直近で14%まで引き下げており、リラ安進行は実質金利が大幅にマイナスとなったことが影響した可能性はある。ただ、ブラジルは、11月の物価上昇率が前年比10.74%まで上昇した一方、政策金利を9.25%まで引き上げた。足元で実質金利のマイナス幅は縮小しており、年明け以降にプラス圏へ上昇するかが、レアルの動向のカギとなろう。
   以上から、2022年に新興国通貨の強弱を決める要因として、引き続き(1)貿易収支と(2)実質金利の動向の2点に注目していきたい。2022年は米国の利上げ再開が米ドル高をもたらす構図が一段と色濃くなり、新興国通貨全般にとって厳しい環境になると予想している。ブラジル(政策金利:9.25%)やロシア(同:8.50%)のように、高金利通貨化が進む通貨があるなかで、株式と同じく新興国通貨も選別が必要な時間帯が続くことになろう。
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