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過剰流動性相場は変わらない

2021-12-30

■ 量的緩和策と財政拡張が過剰流動性の供給源

■ 一度放出された過剰流動性が急速に吸収されるとは想定しにくい

    過剰流動性相場とは、金融緩和などによって市場の流動性が正常な経済活動に必要な水準を大きく上回る状態が継続することで、その資金の一部が金融市場に流れ込み、資産価格が上昇しやすくなる相場の状態を言う。金融機関から経済全般へ供給されている通貨の総量(預金などを含む)を示すマネーストックの対名目GDP比率(マーシャルのk)を確認すると、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックで断層的に切り上がっている。リーマンショック前までは米国が約50%、ユーロ圏が80%前後、日本が130%台で推移していたが、新型コロナ禍前の2020年2月にはそれぞれ71%、103%、189%に増加。新型コロナ禍後の2021年10月には91%、117%、218%に一段と増加している。

    こうした過剰流動性の供給源のひとつは、中央銀行の量的緩和策であろう。リーマンショック前までの日米欧の中銀資産規模(対名目GDP比)は、米連邦準備理事会(FRB)が6%前後、欧州中銀(ECB)が15%前後、日銀が20%前後で安定的に推移していた。その後、リーマンショック、コロナショックを受けた量的緩和策により拡大基調が継続し、2021年10月には約37%、68%、135%に増加している。また、もう一つの供給源と考えられるのが、各国の財政拡張である。日米欧の政府債務残高(対名目GDP比)は、リーマンショック前(2007年)の70%、73%、181%から2020年には98%、134%、254%まで増加している。中銀資産規模の縮小は株安が、財政拡張の巻き戻しは政権支持率の低下が、それぞれ高いハードルになると思われ、一度放出された過剰流動性が急速に吸収されることは想定しにくい。

   FRBが資産規模縮小に向けた議論を始めた模様で、仮に実行された場合には過剰流動性の吸収につながることから、金融市場が不安定になる可能性はある。しかしながら、日欧では資産購入が継続される見込みであるほか、各国が財政緊縮化に向かう公算は小さいとみられることから、過剰流動性は今後も残存し株価を下支えすると思われる。

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