「ポストコロナ」3年目は構造問題が焦点に
2021-12-29
■ 2021年は経済活動再開により景気が急回復した一方で、供給制約やインフレが問題となった
■ 2022年は産業構造、商慣行、生活様式の変化などが及ぼす影響がより明らかに
2021年の経済を振り返ると、前年に引き続き、新型コロナウイルス感染の波に左右された1年であった。ただ、前年とは問題の様相が大きく変わっている。
「ポストコロナ(コロナ禍以後)」2年目となる2021年は、1年目の2020年とは異なり、先進国を中心に新型コロナワクチンが普及したため、多くの国で感染拡大防止と社会経済活動の両立へと政策方針が転換された。年前半は、ワクチン接種が進展した欧米諸国を中心に経済活動再開(リオープニング)の動きが広がり、「リベンジ消費」と呼ばれる繰延需要が強まった。米国、ユーロ圏では、個人消費は「プレコロナ(コロナ禍以前)」のトレンドへ復帰した。ただ、次第に半導体不足、主要港湾での輸送貨物輸送の渋滞などの問題が表面化し、供給網の混乱が強まった。年後半は、製造業の活動が制約され、製品供給が滞るとともに販売価格が上昇した。主要中銀は、初秋までは、物価高騰を都市封鎖により急激に落ち込んだ前年を基準とすること(ベース効果)による一過性の現象であると見通していたが、上記要因や国際商品価格高騰を受けて、認識を改め始めた。
2020年は厳格な経済活動制限による需要の落ち込みや雇用喪失が経済の懸念事項であったが、現在は供給網の混乱、労働需給の不一致などの供給制約やコストプッシュ型インフレが問題となっている。前年の政策対応の副作用ともいえる状況に直面しており、需要下支えや雇用最大化を図るために実施されてきた大規模な財政・金融緩和は、目下の問題に対応するため、軌道修正を迫られている。
「ポストコロナ」3年目の2022年は、財政・金融政策の正常化が一段と進展することが想定される。同時に、感染拡大防止と社会経済活動の両立がさらに浸透し、社会経済活動も正常化に一段と近づくだろう。コロナショックと政策支援効果が一巡し、2022年は「ポストコロナ」の構造変化の影響がよりはっきりと表れると考えられる。2021年に、供給制約、労働需給の不一致など問題は表面化したが、産業構造、商慣行、生活様式の変化などが企業活動や経済にどのような影響及ぼすのかは、むしろこれから明らかになってくるとみられる。