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トルコ中銀の独立性を毀損する危うさ

2021-12-22

■ トルコリラは一時、18リラ台前半、6円台前半の史上最安値を更新

■ リラ建て預金者保護の異例措置はリラ暴落に歯止めを掛けたが、通貨の信頼性は揺らいだまま



   年初来、トルコリラ(リラ)は対ドルで45%、対円では40%急落し、リラ安に拍車が掛かっている(20日終値ベース)。エルドアン大統領が首相だった2011年3月、内需過熱によるインフレ圧力と経常赤字拡大に対して政策金利を引き下げ、消費者物価指数(CPI)上昇率を前年比3.99%に抑えた実績に言及したため。「利上げこそが物価高の原因」だと主張し、新たな政策の根拠にイスラム教が高利貸しを禁じていることを挙げ、利下げ継続の姿勢を堅持。16日には、最低賃金を来年50%引き上げ月額4250リラ(275ドル)にすると発表したが、リラ安のためドル換算は1年前(380ドル)を下回る。また、トルコ中銀(TCMB)は17日に今月で5回目の市場介入を実施、「不完全な価格形成」を理由にリラを下支えした。だが、2022年にはCPIが現在の21%から30%を超えるとの予想もあるなか、インフレ高進への懸念は根強い。クリスマスを控えた薄商いの20日、一時対ドルは18.3624リラ、対円は6.1723円まで下げを拡大し史上最安値を更新した。

   こうしたなか、エルドアン大統領は異例の措置でリラの押し上げに動いた。為替変動からリラ建て預金を保護する新たな政策を導入すると発表。ハードカレンシーに対するリラ下落が銀行の約束する金利を上回る場合、政府がリラ建て預金者が被る損失を補償する方針を打ち出した。トルコ最大の経済団体、トルコ産業・企業家協会(TUSIAD)は、リラ減価が経済の均衡を損ねているとして、低金利政策を放棄するよう政府に是正を求めるなか、法人税減税にも踏み切り企業負担を軽減することも明らかにした。これらの発表を受けて、対ドルは13リラ台前半、対円は8円台半ばへ急反発したが、損失補填の具体的計画など詳細は明らかにされていない。一方、TCMBは16日の会合で政策金利を14%へ引き下げており、利下げは9月以降で4会合連続の累計5%となる。持続可能な物価安定に向けて政策の枠組みを再評価するとして、2022年1月20日の次回会合では政策金利を据え置く可能性が示唆されたが、金融当局の独立性を毀損する政府対応の危うさは、通貨の信認を失墜させることになろう。

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