「市場との対話」は第2ラウンドも波乱なく通過か
2021-12-21
■ インフレ対応を強める米国、英国と、政策余地を残すユーロ圏、豪州で、金融政策姿勢が乖離
■ 中銀は「ビハインド・ザ・カーブ」の状況だが、「ハト派的利上げ」とは受け止められていない
先週までに各国で行われた金融政策決定会合では、各国のインフレ対応が乖離しつつあることが明らかとなった。米国、英国など一部の中銀はインフレ対応の優先度を上げ、金融引き締めへの政策転換を明確にした。一方で、ユーロ圏、豪州ではコロナ禍後に緊急対応として導入された資産購入策を段階的に終了することを決定したものの、インフレ対応には消極的な姿勢を保ち、2022年の利上げ開始には改めて否定的な見解が示された。
第1ラウンドとなった11月初の会合では、主要中央銀行が金融市場の大きな混乱を招くことなく、そろって金融政策正常化に向けて舵を切ることに成功した*1。第2ラウンドとなる先々週以降の会合では、米国、英国がインフレへの対応を強めた一方、ユーロ圏、豪州などは政策調整余地の確保を優先し、対応が分かれつつある。中央銀行が従来の物価認識を大幅に修正して政策姿勢を改めており、インフレへの政策対応が遅れる「ビハインド・ザ・カーブ」の状況であることは否めない。
ただし、金融市場ではさらなる追加利上げを織り込む動きはみられず、結果公表後の市場金利の変動は小幅にとどまっている。金融市場の反応から判断すると、第2ラウンドも金融市場の大きな混乱を招くことなく乗り切ったようにみえる。米国を例にみると、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の政策金利見通しにて、金融市場での織り込みに概ね一致するペースでの利上げを提示し、「ハト派的利上げ(dovish hike)」と受け止められることを回避している点において、市場との対話を無難に成し遂げたと評価できよう。
世界の金融政策サイクルは、米国が先頭を走り、各国がそれに追走することが歴史的に繰り返されてきた。大局的視点では、今回も、米国が金融引き締めに転じたことに伴い、来年以降、米国に続いて金融引き締めに転じる国が増えることが連想される。米国、英国が物価認識を改めたことにより、ユーロ圏、豪州など従来の物価認識を据え置いている中央銀行は、今後、金融市場と一段と難しい対話を進めていくことになりそうである。
*1 詳細は PRESTIA Insight 「「市場との対話」第1ラウンドを波乱なく通過」(2021年11月5日)