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12月第4週の相場展望(12月20日~12月24日)

2021-12-20

米国FOMCでは、テーパリング縮小を予定通り進め、新型コロナに対するパンデミックの環境下で実施していた債券買い入れプログラムを来年3月に終了し、来年末までに0.25%ずつ3度の利上げで合計0.75%の利上げを行う方針を示した。現在は、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.00~0.25%とする金融政策となっており、2023年末までに0.75%~1%とする予定とした。FRBは、2020年の3月に新型コロナウィルスによる経済の混乱を抑える目的で、1~1.25%から1%の緊急利下げに踏み切り、約1年9ヶ月間の危機対応モードを終了する予定である。米国政策金利は2007年のリーマンショック後に、現在と同じ低水準を7年間ほど維持して経済の回復に努め、明確な景気拡大局面で2015年末から利上げを徐々に行い、2019年は2.5~2.75%まで引き上げた後はじりじりと低下させるなど微調整しながらの金融政策だった。

今回のFOMCの結果を受けて一時的に米国10年債利回りは上昇となったが、市場はある程度想定していたことで徐々に軟化し、1.4%台の居心地の良い水準で落ち着いている。ドル円は114円台には入ったが翌日113円台に戻しており、株価はやや調整気味であったため戻しているが、ほぼ市場の予想通りの結果に近かったようである。

ドル円と米国10年債利回りー比較日足チャート (ドル円は紫)



(Investing.comサイトより抜粋)

この比較チャートからは細かく分析すると7割程度の連動となる。今年後半に絞ると連動は8割以上まで上がった。直近では利回りがやや軟調だが、ドル円は上昇気配を崩しておらず強含みの推移となっていて、連動性に崩れが見られるが、急激な動きがあるとすぐ連動していくので関係性は高いとみてよいだろう。基本的に資金の流れは貿易と金利、M&Aが需給の基本であるから、金利以外の要因からずれが生じることはまれに起こるということだ。金利差が拡大縮小スタートするタイミングは特に連動性が高いので、米国10年債利回りが直近1.4%前後で安定推移しているうちは、FRBの政策に動きがあろうが市場は先回りして織り込んでいるため、ドル円の動きも限定的となる。短期的には、どちらかというとテクニカル要因の影響が大きい為替の方が先に動くことも多いので、そのタイミングを捉えていくことが勝利に繋がる。短期では何も材料が無ければ需給を中心に動き、株価の下落などが顕著に表れるとリスクオフで売り優勢、また逆の場合はリスクオンで買い優勢、の動きは変わらないであろう。中長期的には、基本的に米国の金利との連動が強いと思われる。

FRBが利上げ時期や幅を言明したにもかかわらず、長期金利は大きく動かない。理由は米国債への投資をするマネーが多いということ。つまり金余りに他ならない。現金で持っていてもインフレで実質の目減りとなるから、安全な米国債で運用したいファンドや個人の需要が多いとみられる。キャッシュの受け皿となっているからだ。大きく市場予想を裏切る形のインフレとFRBの金融政策変更がなければ長期金利の大幅上昇は無く、結果株式相場への大きなサポートとなろう。論理的には金利が上昇すれば株価は軟調となるのがセオリーだが、今回は簡単にその論理が成立するとは思えない。また仮想通貨へ流れているマネーも膨張しているわけで、マネーは中銀の予想を超えて増えているのが事実であり、そこはコントロールが難しい。来年以降も更なる株価上昇へメタプラットフォームの年間3兆円の設備投資が待っている。またこれは数年間以上継続するらしい。今後どういう形でバブルになるかわからないが、プチバブル程度では冷や汗だけで終わってしまう。心配な種が木や森にまで成長しなければ良いのだが、また来年もボラティリティーが高く熱い相場は様々な金融商品に何時でも出現するだろう。

先週は英国中銀BOEが据置予想から利上げに動いたことで、ポンドが急伸することとなった。しかしその後はやや利食いで低下している。ポンドドルは、ドルの強さも相まって利上げ前の水準に戻している。BOEは利上げこそ小幅に行ったが資産買い入れに関しては据え置きとなって、直近のインフレに対してのみに対処し、ダイレクトな影響を考慮しての処置と考えられる。直近のオミクロン株感染者増が見られ、それに対してロックダウンに近い行動制限から経済への悪影響もあるためにそこは据え置きとしたのだろう。テクニカルから見ていくと、ポンドドルは昨年5月以降なだらかな下落トレンドバンドの中で軟調推移が継続しており、ジグザグの形状で下落している。回数としては直近の安値を付けた12月8日の1.3159付近まで下落したので、バンド内では4回目の下落の動きだ。またその安値付近が丁度下落バンドの下限付近であり、タッチした後反発してバンド内へ戻っている。このバンドが機能している間は底値不安からは逃れなれないと思うが、4回もの流れがあったことでそろそろバンドを破る可能性が大きくなっている。利上げ後の上昇は簡単に止められており、上値が重いので、下値を割り込む可能性も出てきた。そうなると下落トレンドの傾斜がきつくなるパターンも考えられ、更なる下落とその加速の可能性も残る。もし上げるとしても上値の重さで売りが散見されるとみており、上昇はゆっくりとなるはずである。ポンドドルの下落を止めるには、RSIの50回帰、もしくは25日移動平均線の上向き形状が必要となろう。短期的には、今後のオミクロン株感染の行方が短期の相場の動きを左右し、逆にインフレへも目配せと、米国や欧州と同じく、中銀は今後難しい運営となっていく。現在の下落版と下限の1.3150レベルは昨年3月安値と今年高値の幅からの38.2%下落幅にもあたっており、この水準を下抜けすると次は50%戻しの1.2820付近までの下落を予想している。

ポンドドル日足チャート



ECBは16日の会合で新型コロナウィルス対応の緊急支援策を終了するが、資産買い入れは継続し、景気の面からは来年も支援する方向だ。日銀も先週同じようにコロナ対策の縮小としたため、世界各国で金融政策の見直しが行われることから株式相場には悪材料となっている。年を通じてここまで上昇したこともあり、年末で利食いのタイミングを待っている向きからは売りが多く出るに違いなく、今週はややリスクオフの方向ではないだろうか。株価の下落には注意しておきたい。今週は大きなイベントは少なく、中銀関係者からのコメントは続くようで、今後の金融政策への思惑からの相場付きとなるだろう。
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