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インフレへの対応が対照的だった欧州中銀と英中銀

2021-12-20

■ 欧州中銀はインフレ高進よりも景気支援を優先させ、来年以降の資産購入策の調整を決定

■ 対して、英中銀はインフレ高進への対応を優先させ、市場予想に反して政策金利引き上げを決定


   12月16日に開催された欧州中銀(ECB)理事会と英金融政策委員会(MPC)は、対照的な結果となった。ECBは2022年中の利上げ実施に否定的な見方を示した一方、英中銀(BOE)は市場予想に反して、0.25%への利上げを決定した。

    ECBは今回、物価上昇は一時的との見方を維持し、インフレ高進への対応よりも欧州内の景気支援を優先させた。ECBは3カ月に1度示すスタッフ予測で、事前報道通り2023年と2024年のインフレ見通しを物価目標値である2%以下(ともに1.8%)とした一方、2022年の成長率見通しを従来の4.6%から4.2%へ引き下げている。具体的な措置では、パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)と従来の資産購入プログラム(APP)を巡る決定に注目したい。PEPPを予定通り来年3月で終了させ、代わりにAPPの月次購入額を一時的に増やすと決定した。ここまでは市場の想定通り。一方で、APPは来年4-6月期に従来の月額200億ユーロから同400億ユーロへ増額後、来年7-9月期は同300億ユーロ、来年10月以降は同200億ユーロへ減少したうえで「必要な限り」続けるとされた。また、PEPPの償還再投資期限は従来の2023年末までから1年間延長され、APPで現在対象外とされるギリシャ債券を「償還分以上」に買う可能性があるとした。特に、ギリシャ債券への対応は、ラガルドECB総裁も「ある国に関して固有の条項を設けることは珍しい」と述べるほど、異例な措置である。欧州の株式・債券市場にとって、ポジティブな結果と整理できよう。

    対して、BOEはインフレ高進への対応を優先させた。BOEは来年4月のインフレ率見通しを、物価目標値(2%)の3倍の伸びとなる6%に達するとした。すでに11月の消費者物価指数上昇率は前年比5.1%に達しており、ベイリーBOE総裁は「行動を余儀なくされた」と述べている。また、11月の被雇用者数の増加幅は、2014年の調査開始以降で最高の伸びを記録し、今年9月末に雇用維持制度が終了した影響は軽微と判断されたことも、BOEの利上げ決定を後押ししたと言えよう。ただし、今回も国債と社債の買入枠(8750億ポンド、200億ポンド)を全会一致で据え置いた。BOEは来年以降の利上げを示唆しながらも、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う景気低迷への警戒を維持している。

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