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FOMCレビュー

2021-12-17

■ 量的緩和終了時期が前倒しされ、来年の利上げ予想回数が1回から3回に.

■ 利上げペースと量的引き締めに関する情報発信が今後の注目点に.


   14、15日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、声明文から「物価上昇は一時的」との文言が削除され、物価上昇率の一段の上昇と労働市場のさらなる改善を考慮して、資産購入の段階的縮小(テーパリング)ペースの加速が決定された。資産購入額の縮小ペースは月150億ドルから300億ドルに倍速化され、テーパリング終了時期は来年6月から3月に前倒しされることとなる。パウエルFRB議長は新型コロナウイルスオミクロン株の出現により経済・物価見通しの不確実性が高いと改めて指摘しつつ、オミクロン株出現でもテーパリングを進められるほど経済は力強いと述べ、インフレが目標を上回るなか最大雇用まで待ちすぎることはできないと指摘し、金融政策正常化に歩を進める姿勢を示している。

   同時に示されたFOMCメンバーの経済・政策金利見通しでは、個人消費支出(PCE)デフレーターの2022年(2.2%→2.6%)、2023年(2.2%→2.3%)の予想がそれぞれ引き上げられたものの、中長期のインフレ期待が安定的に推移するなか、供給制約の緩和や資源価格の安定化により物価の伸びが徐々に鈍化していくとの見方が維持された。政策金利見通し(中央値)に関しては、2022年中の利上げが1回から3回に引き上げられた一方、2023年は3回で据え置き、2024年は3回から2回に引き下げられた。利上げ開始時期は前倒しされたものの、2024年までの合計回数は7回から8回への引き上げにとどまった。来年後半のインフレ鈍化を踏まえれば、早いペースで利上げが行われるとは想定しにくいということだろう。

    パウエルFRB議長はテーパリング終了まで利上げはしないと金融政策正常化の順番を改めて示した一方、テーパリング終了と利上げ開始の間に時間を置くべきか未定と述べた。今後の金融市場の注目点は、利上げ開始時期と利上げペース、利上げ終了時の政策金利水準などに移行しよう。また、FRBのバランスシート規模の調整も注目される。パウエルFRB議長はバランスシート縮小、いわゆる量的引き締め(QT)に関しては何も決定していないと述べたものの、今後の会合で協議すると含みを持たせた。FRBの総資産は2019年9月に約3.8兆ドルまで縮小したが、新型コロナへの対策で約8.7兆ドル(8日時点)まで拡大しており、利上げを一定期間進めた後にはQTが視野に入る。QTは過剰流動性を吸収する作業にほかならず、金融市場が神経質に反応する可能性があるため、FRBからの情報発信を注視しておきたい。
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