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「グリーン」を目指す動きが物価上昇圧力に

2021-12-10

■ 「グリーンフレーション」は一時的な物価上昇圧力とは異なる可能性

■ 各国中銀は「グリーンフレーション」への対応に頭を悩ませることとなろう


    気候変動対策に端を発する物価上昇、いわゆる「グリーンフレーション」が意識され始めている。世界的に脱炭素の流れが強まるなか、欧州各国では発電燃料を石炭や石油よりも温暖化ガスの排出が少ない天然ガスに切り替える動きを進めていたが、ロシアからの天然ガス供給が伸び悩み、欧州の天然ガス価格が急騰。目先の安定的な電力供給に向けて原油需要が強まるとの見方が強まり、原油先物価格(WTI)を下支えしている。また、太陽光や風力発電は火力発電よりも多くの配線が必要とされ、銅やアルミなどの金属価格の押し上げにつながるとの指摘もある。こうした「グリーン」を目指す動きはエネルギー価格の高騰を招き、それが物価上昇圧力となる構図となっている。
    一般的に、コストプッシュインフレは資源の需給が一時的にアンバランスになることにより発生することから、長期化しないと考えられる。しかし、「グリーンフレーション」となれば別の視点が必要だろう。エネルギー転換には大規模なインフラの更新などを伴い時間がかかる公算が大きいが、「グリーン」に対する意識が高い国・地域ほど転換を急ぎがちで、目先のインフレ上昇圧力となる。その影響は時間とともに弱まるはずだが、一般的なコストプッシュインフレより沈静化までに時間がかかるおそれがあるほか、物価が想定を上回る水準で安定化する可能性がある。
    一部の中央銀行は気候変動対応支援を実施しており、ある意味では「グリーンフレーション」を後押しする構図となっている。こうしたインフレ圧力に対応するならば、政策面で矛盾が生じかねない。また、脱炭素の動きが政策的に進められ、構造的な物価上昇圧力となった場合、金融政策では抑制できない。各国中央銀行は対応に頭を悩ませることとなろう。
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