米国株:市場とのコミュニケーションミスを警戒
2021-12-08
■ 米金融政策はインフレ抑制重視の姿勢に転換
■ 市場が金融緩和を催促し、株価の下げ幅が拡大するリスクが高まった
11月30日、12月1日の米議会上下院銀行・金融委員会の公聴会にて、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、高インフレについて「一過性という文言の使用をやめる適切な時期の可能性がある」と述べたほか、FRBは雇用の最大化と物価の安定という二大責務(デュアルマンデート)の均衡を取る必要があるとした。また、新型コロナウイルスオミクロン株が感染拡大した場合、景気見通しの下振れリスクとインフレの上振れリスクが意識されることとなるが、同議長は後者のリスクを警戒すると述べている。FRBはこれまで、インフレに配慮しつつも雇用の最大化を重視する姿勢を保ってきた。金融市場では、景気や企業業績の先行き不透明感などの株安要因の台頭が金融緩和の手掛かりとなり、逆に株高要因となる都合のいい解釈が成り立ってきた。「パウエル・プット」などと呼ばれたこうした政策スタンスは転換することが見込まれ、米国の株価動向にも影響を及ぼす公算が大きい。
情報会社リフィニティブの集計によれば、S&P500構成企業の2022年の一株当たり利益(EPS)は先週末時点で前年比8.0%増と、今年(同49.4%増)より鈍化するものの着実な伸びが見込まれている。現時点では、米国株に対するやや強気な投資判断を修正する必要はないと考えている。ただ、FRBが2018年後半のように市場とのコミュニケーションに失敗した場合、市場が金融緩和を催促する動きをみせ、株価の下げ幅が拡大するリスクが高まったと認識しておくべきであろう。