トルコリラは史上最安値を更新
2021-12-07
■ 7-9月期のトルコ実質GDPは前年比7.4%増へ伸び鈍化、インフレ率は21.31%上昇へ加速
■ トルコの外貨準備高減少や短期対外債務増加が顕著となれば、リラは一段安の展開に
トルコ統計庁が11月30日に公表した7-9月期の実質GDPは前年比7.4%増と個人消費や製造業が好調で成長を下支えしたが、前期(同21.7%増)から伸びは鈍化。エルドアン大統領は、経済成長や雇用、投資を優先事項とし、中央銀行に政策金利を引き下げるよう圧力を掛け続けるだけでなく、12月2日にはエルバン財務相の辞任を承認した。政策金利は今年9月以降、19%から15%に引き下げられたが、11月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比21.31%と3年ぶりの高水準を記録、需要増を反映し、食品やレストラン、ホテルの料金が押し上げたほか、世界的なエネルギー高を受けた輸送費の上昇も物価高につながった。生産者物価指数(PPI)上昇率はリラ安に伴う輸入物価の押し上げで同54.62%へ加速しており、CPIは今後数カ月でさらに伸びが加速すると市場は見込む。年内最後の会合は12月16日に開催。
12月3日、大手格付け会社2社は同国の格付け見通しを「ネガティブ」とし、政策ガイダンスの欠如などを指摘した。トルコ中銀は同日、リラ買い・ドル売りの直接介入を実施したが、こうした状況が長期化すれば、インフレが制御不能に陥り、システミックリスクが高まるとの懸念がくすぶり、介入効果は限定されている。新型コロナウィルスオミクロン株の感染拡大によって、最大の輸出先である欧州連合(EU)が景気減速に向かえば、トルコの主要産業となる観光業だけでなく、経済をけん引する輸出低迷で景気下振れへの懸念が広がる。先週末、対ドルは13リラ台後半、対円は8円台前半まで急落し、史上最安値を更新しているが、実質金利はマイナス幅の拡大が顕著となるなか、外貨準備高の減少や短期対外債務の増加が顕著となれば、リラが一段安となる展開もあろう。