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FRBは柔軟性を保ちつつ利上げ開始時期を探る

2021-12-06

■ パウエルFRB議長は金融政策正常化の加速を示唆

■ 政策金利に関するガイダンスは、新型コロナウイルスオミクロン株の影響を見極めた後か

   11月30日、12月1日の米議会上下院銀行委員会の公聴会にて、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、高インフレについて「一過性という文言の使用をやめる適切な時期の可能性がある」と述べ、従来の見解を大幅に修正した。また、12月14、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、資産購入の段階的縮小(テーパリング)完了を数カ月前倒しするためにペース加速を協議することを明らかにした。利上げに向けてFRBが設定した条件も今後数カ月のうちに満たす可能性も認めている。パウエルFRB議長再任の見通しを受けて「FRBが利上げ開始時期などに関して具体的なガイダンスを示す素地が整ったと考えられ、コミュニケーションの論調が変化する可能性を認識しておく必要がある」と指摘していた筆者の想定通り*1、パウエルFRB議長は再任後の2022年2月以降の金融政策について、早速、金融市場との対話に着手し始めた。

   今後も、雇用情勢や物価がFRBの想定通り推移すれば、テーパリング完了と利上げ開始時期が前倒しされる公算は大きい。テーパリング完了の前倒しについては具体的に言及されており、新型コロナウイルスオミクロン株の感染状況に関わらず、予告通り進められよう。一方、現時点では、既存ワクチンの有効性など不明な点が多く、経済への影響は流動的である。議会証言でも、雇用、経済活動の下振れや物価の不確実性上昇が指摘されており、政策運営の柔軟性を確保する観点でも、経済への影響を見極めるまで利上げ開始に関する具体的なガイダンスの発信は控えられるだろう。

   12月14、15日のFOMCでは、四半期に1度の「経済見通し概要(SEP)」が発表される。参加者の政策金利の見通しは利上げ開始時期や利上げペースを探る重要な手掛かりとなるとともに、見通しに対するリスクバランスの変化から新型コロナウイルスオミクロン株に対するFOMC参加者の警戒感も確認できる。テーパリングのペースを加速させることがほぼ確実視されるなか、SEPの内容から、FRBの利上げ開始時期、ペースなどに関する現時点での見解をうかがうことになりそうだ。

*1 詳細は PRESTIA Insight 「FRB議長人事を経て、利上げに関する対話開始へ」(2021年11月30日)

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