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新興国中銀:2022年はアジアにも利上げの波が到来か

2021-12-02

■ 新興国では、ブラジルとロシアを筆頭に連続利上げを実施する中央銀行が一段と増えた

■ 金融引き締め傾向を通じ、2022年は新興国市場の不安定感が一段と意識されるとみている


   本稿では、10月以降の新興国中央銀行の動向を整理する。夏場以降、新興国中銀の間で利上げ実施の波が広がるが、11月3日に米連邦準備理事会(FRB)が資産購入の段階的縮小(テーパリング)開始を決定したことも、こうした動きに拍車をかけているとみられる。
   10月1日から11月30日にかけて、計16カ国(ポーランド、ペルー、インド、韓国、チリ、インドネシア、ハンガリー、トルコ、ロシア、ブラジル、マレーシア、チェコ、タイ、メキシコ、フィリピン、南アフリカ)の新興国中銀が政策会合を行った。このうち利上げ決定は10中銀と、8月16日から9月24日まで(利上げ実施は9中銀)と比べて一段と増加。今年6回目の利上げを実施したブラジルとロシアを筆頭に、数会合連続で利上げを実施する中銀が南米と東欧を中心に増加傾向にあることも、直近の特徴である。なお、南ア中銀が11月18日に3年ぶりの利上げを実施するなど、物価上昇リスクを考慮した予防的な利上げ措置をとる中銀も増加している。
   世界全体で物価上昇リスクへの警戒に歯止めがかからないなか、新興国の利上げ傾向は続くと考える。併せて今後金融市場で警戒すべきは、「拙速な金融引き締めが景気回復ペースを抑えるリスク」となろう。また、新型コロナウイルス「オミクロン株」が深刻な脅威を新興国へもたらす可能性もあり、多くの新興国中銀にとって、物価上昇リスクとのバランスに苦慮する時間帯は続く見込み。そうしたなか、10月以降に政策金利を据え置いた5つの中銀は全てアジア地域(インド、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア)だったが、そのアジアにも利上げの波が訪れるのは時間の問題とみている。「オミクロン株」出現前だったが、台湾中銀総裁は11月22日に「来年は世界的な金融引き締め方向に追随する」との見通しを表明したほか、インドネシアやフィリピンの各中銀総裁も、今年10-12月期に景気回復の兆候が確認されるとの経済予測を受けて、来年7-9月期までには利上げを実施するとの見通しを表明した。現時点で極端な通貨安が進むのは、物価上昇に反して中央銀行が利下げを断行しているトルコリラに限定されているものの、2022年は新興国市場の不安定感が一段と意識されよう。
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