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原油:OPECプラスに増産停止の道が開かれた?

2021-11-26

■ 戦略石油備蓄の放出が原油相場に及ぼす影響は限定的

■ 主要産油国が増産を停止する口実とされる可能性も


    バイデン米政権は23日、日本や中国、インド、韓国、英国といった主要石油消費国と協調し、石油価格の抑制に向けて戦略石油備蓄(SPR)を放出すると発表した。米国は国内消費量の約3日分に相当する5000万バレルを今後数カ月間かけて放出するほか、インドは備蓄から500万バレル、英国は民間備蓄から150万バレルを任意に放出することを認めると表明した。しかしながら、米国の放出分の過半は将来的にSPRに戻すことが前提となっているほか、全体の放出規模が市場予想を下回ったため、発表前まで下落していた原油先物価格(WTI)は上昇に転じた。

    報道によれば、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成するOPECプラスの10月の減産順守率は116%と、9月の115%から上昇した模様で、原油生産量が引き続き合意水準を下回っていることを示している。非加盟産油国の順守率は106%と9月の114%から低下した一方で、OPEC加盟国の順守率は121%と9月の115%から上昇し、5月以来の高水準となった。ナイジェリアとアンゴラが投資不足などにより増産余地が限られ基準を満たせない状況が続いているほか、OPEC主要産油国が増産に意欲的でない様子が改めて確認された。

    OPECは11日に公表した月報で、7-9月期に中国とインドの需要が想定より弱かったほか、資源価格の高騰が10-12月期の需要回復を抑制するとの見方を示し、今年の原油需要見通しを引き下げた。OPECプラスはこれまで来年1-3月期の季節的な需要減に対する懸念を示してきたが、欧州で新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、経済活動制限が原油需要の抑制要因として加わる格好となっている。OPECプラスが慎重な需要見通しを示すなかでSPR放出による供給増が決定されたことを踏まえれば、増産停止が正当化されるとの指摘もある。主要産油国の原油生産方針を見極めようと、12月2日のOPECプラスの会合に対する注目度はこれまで以上に高まろう。
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