11月第5週(11月25日―11月29日)の相場予想
2019-11-25
(先週の動き)
週を通して米中貿易協議への発言次第での動きに終始しました。ドル円は約80ポイント(0.8円)、ポンドドルは約100ポイント(0.01ドル)とFX相場は動意に欠ける展開。しかし株価インデックスは動きが継続し、レンジ幅は大きいながらも行ってこいの展開で終始しました。
動きの要因である、米中貿易協議に関連ある事柄を箇条書きにしています。
18日(月)トランプ大統領 「米国政府が中国と通商問題で合意できなければ、対中関税を一段と引き上げる」 として、更なる輸入枠の増大を求めており、株価指数は下落、若干円高へ。
19日(火)米国議会上院で「香港人権・民主主義法案」を可決し、株安が継続し、金が強 めの動きで推移。投資マインドが悪化し始めた。
20日(水)中国政府筋は米国の香港人権法案成立に対して反発するコメントを出し、 リスクオフの雰囲気が蔓延。若干の株安と金高が進む。
21日(木)アジア時間で香港ハンセン指数が大きく下落し、日経平均に飛び火した。 日経平均はCTAという先物中心に売買を行いヘッジファンド勢が短期のロング ポジションを手仕舞う動きがでたと推測され、仕掛けが入ったようで、ハンセン 指数が下げ止まったあとに150円程下げた。そのあと、買戻しとなって300円 程戻して終わるなど乱高下の動き。逆にドル円は約20銭程度のレンジで小動 きと対照的な変動率となった。中国の劉鶴副首相が、米中貿易協議に関して、第1段階の合意に「慎重ながらも 楽観的」という見解を発表し、そこから戻しの展開となりました。
22日(金)中国の習近平主席は、貿易戦争は望んでなく、平等な通商合意を期待している と言いつつも、必要があれば反撃するとくぎを刺した。 この発言で円安、株高がやや進んだ。
(今週の展望)
新たにドラギ総裁からバトンを受けたECBのラガルド新総裁は、ECBの金融緩和継続への必要性を説きEU各国の財政出動強化への必要性があると述べ、ユーロが下落したことでドル指数が上昇。ドル指数の上昇で、金は軟化、ポンドも連れ安の動きが顕著となっています。
香港で24日に実施された区議会選挙は、投票率が過去最高となり、開票の初期段階で民主派が大きくリードしているようで、その影響もあって月曜日の早朝時点では、香港ハンセン株価指数は0.5%ほど上昇している。基本的にはリスクオンとなりそうだが、今後好影響が継続するのかは、選挙の結果を受けての中国政府側の動き次第であろうから、発言等には気を付けていきたいところ。
英国の総選挙12月12日を前にして、現在はジョンソン首相の与党が大きくリードしている様子。ポンドは小動きとなっており、10月に約1000ポイント上昇した短期ポジションの調整局面が続いています。1.2768を底に1.3000を上値としてのレンジが継続すると考えています。1.2780を割れると下方向が強まるチャート形状ではあるが、その場合、イベント前で大きく下げる要因がないためストップハンティング程度で終わるのではないだろうか。上値を追っていくにも選挙の結果などの理由が必要となろうが、今週もシカゴ先物市場の売りポジションは減少しており、下値は堅いのではないかと予想しています。
金相場がテクニカル分析通りに動いており、現在は軟調な動きが継続。今年4月から8月まで上昇した後の調整段階と捉えており、1445ドルが一つの下げのターゲット、次に1411ドルが控えています。下げが継続し1445ドルを下回ると1411ドルまで可能性が出てくるが、その間のレンジ相場が続くと思っています。1445ドルまでで底堅い動きとなれば、1515ドル付近を高値に、しばらくはレンジでの動きが継続しそう。フィボナッチ数列からのテクニカル分析では、変動率大きくなる(ボラティリティーの高まり)期日としては、約3~4週間後のタイミングとの予想が導かれます。その頃には調整が終わり、また英国選挙の時期辺りとも重なってくるので、大きな動きが始まるのではないでしょうか。それ以前は逆張り、それ以降は順張りが功を奏する相場付きとなると読んでいます。
ドル円は、今年のレンジがここまで7.5円と、ここ20年平均レンジである約13円の半分近くしかなく、日本輸出企業の売りとドル買いが交錯し、そこそこ出来高はあると思うが動きが鈍い。107円、もしくは109.50の外側まで行かないとレンジ相場内の小動きの展開が続きそうです。またチャート上では、三角持ち合いが続いており動きにくい形状です。しかし動きの出るタイミングとしては、12月後半から年始で、昨年の急降下した相場が思い出され、年末からは円高警戒相場へと変化すると予想します。
<貿易戦争への考察>
米国が中国に向けて貿易の締め出しを行っているのは、貿易黒字の大きさによるもので、平等な貿易の立場からは、世界的な暗黙の了解のもと、為替によって調整されている。しかし、中国は元相場を他国以上に強く支配しており、レートをコントロールすることが出来る。そうなれば貿易黒字は継続、増大され、各国から非難を浴びてしまう。各国の中銀が金融緩和で長期金利をある程度調整し、その結果各国の通貨安となっているのは貿易と経済のバランスから見ると仕方がないことではあるが、背景に中銀のコントロールがあっても、民間の需給比率が大きい国々は中国ほど調整が上手くいかないが、自然で合理的な形で外国為替レートが決定されています。貿易黒字国通貨は買われ、貿易赤字国は売られる。米国は暗に本音では、人民元の自由化を求めているのではないでしょうか。
外国為替の硬直化が及ぼす悪影響は、EUにも言えます。ギリシャが経済悪化している間でもユーロが流通通貨だったため、外国為替の調整が全くできず、財政悪化に陥った。どういう資本経済の形が良いのか、20世紀はそこのところを探る戦いが続いていきそうです。違う形態の資本経済の国々が貿易に対して戦争を起こしているから、完全納得の合意は難しいと思っています。しかしある程度の妥協の合意で収めて欲しいと双方思っているはずで、第一弾から第四弾などと細切れにして少しずつ歩みよるしかない状況です。米国の干渉はやり過ぎ、中国の人民元レートや資本移動の規制もやり過ぎだが、現在は世界的にこそこそと金融緩和し、建前は違うが実際為替を安く促している国も多く、他国にも強くは言えない立場となっています。大きな背景から見ていくと、来年に迫っている大統領選挙を前にして、米国のトランプ大統領側がある程度妥協せざるを得ない結果となるのではないでしょうか。それまで中国は、自国内の経済を持たせる金利や規制の緩和などを打ち出して凌いでいくでしょう。
貿易黒字が問題だという前提なら、唯一米国が仕掛けるとするとドル安政策でしょうが、米国内の物価高を促し、その上で他国の貿易赤字を増大させると、多くの国との関係悪化をもたらしてしまう。そこに手が付けられないことから、相場の行方は市場参加者次第となるのかもしれません。もしかすると株価はとことんまで上がるしか手はないのだろうか、現在の株価のバリュエーションは、まだまだ高いとは思えないしまだ先の話でしょうが、これから数年のうちに徐々に積みあがる可能性のあるバブルは、ほどほどにして欲しいものです。そういうリスクを感じている人たちが、リスクヘッジとして金を買うことに向かっているようです。