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日本経済:経済対策で参院選までの景気を下支え

2021-11-23

■ 政府は、過去最高の財政支出となる経済対策を閣議決定

■ 歳出規模が重視され、来年夏の参院選に向けた景気浮揚の意味合いが強い


    19日、政府は経済対策を閣議決定した。事業規模約78s.9兆円、財政支出約55.7兆円(国費約43.7兆円、地方負担約6.0兆円、財政投融資約6.0兆円)となり、財政支出は過去最高規模となった。財政支出の内訳は、「新型コロナ感染症の拡大防止」22.1兆円、「社会経済活動の再開と次なる危機への備え」9.2兆円、「新しい資本主義の起動」19.8兆円、「防災・減災、国土強靭化の推進」4.6兆円となる。18歳以下を対象とする国民1人当たり10万円相当の給付金、コロナ禍で売り上げが急減した中小事業者に対する最高250万円の事業復活支援金、看護・介護・保育・幼児教育職の賃上げなどが含まれ、分配色の強い内容となっている。

    景気刺激策も「GoToトラベル」事業再開など一時的な需要創出にとどまる政策が並ぶ。終了後の支出抑制、代替消費の手控えなどを含めると、持続的な需要拡大は見込み難く、追加対策を前提としなければ事業終了後は反動減が想定される。「真水」と呼ばれる歳出により景気刺激効果が見込まれるものの、分配と需要減少の穴埋めが歳出の大半を占めるため政策乗数は低く、効果は政府が見込む累計5.6%の実質GDP押し上げを下回るとみられる。

   「成長戦略」には、「科学技術立国の実現」、「デジタル田園都市構想(デジタル・トランスフォーメーション推進など)」、「経済安全保障(半導体製造工場誘致など)」が掲げられたものの、今回初めて含まれた「経済安全保障」の強化は5000億円規模にとどまる。「分配戦略」との関連性もみえず、岸田政権の経済政策「新しい資本主義」の目玉である「成長と分配の好循環」をどう実現していくのか、具体的な道筋は示されなかった。実効性よりも歳出規模優先の印象は否めず、来夏予定されている参院選に向けた景気浮揚の意味合いが強い*1。

    2021年度補正予算案は、2022年度当初予算案と一体の「16カ月予算」案として月内に編成予定。財政支出のうち31.9兆円は2021年度補正予算案に計上される。政府は、消費税率引き下げ、金融所得課税導入を当面見送る方針を示しており、政策財源は赤字国債の追加発行で賄われる見込み。現時点で国債増発額は未定ながら、30兆円程度とみられた当初より大きく膨れ上がった財政支出に対して、今週以降、債券市場で審判が下される。

*1 政策の実効性に関しては PRESTIA Insight 「「成長と分配の好循環」は実現可能なのか」(2021年10月29日)でも言及している

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