News

英ポンド:12月の利上げ実施観測は高まるが

2021-11-19

■ 11月に発表された英国の労働関連指標と物価指標を受けて、12月の利上げ実施観測が高まる

■ 一方、英国景気回復の勢いは鈍化しており、英中銀が慎重姿勢を崩さないとの思惑もくすぶる


    本稿では、英中銀(BOE)の利上げを巡る動向を整理する。11月4日に開催された英金融政策委員会(MPC)では、政策金利の据え置きが決定された。それから約2週間が過ぎたが、ここにきて12月16日に開催される次回MPCでの利上げ観測が高まっている。本稿執筆時点の短期金融市場では、0.25%への政策金利引き上げが織り込まれている。
    11月MPC以降のポイントは、労働関連指標と物価指標が挙げられる。11月16日に公表された10月の英被雇用者数は前月比16万人増の2930万人となり、2020年2月の水準を0.8%上回った。11月MPC後の記者会見でベイリーBOE総裁は、9月末に終了した政府の一時帰休者支援措置の影響を確認したいとの見解が、政策金利据え置きの決め手だったと指摘していた。そのため、市場の一部では「一時帰休者支援措置の終了が労働市場に与えた悪影響は軽微だった」との判断から、12月の利上げ観測が高まったとみられる。
    加えて、11月17日公表の10月の英消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年比4.2%と約10年ぶりの高い伸びとなった。内訳ではガス料金が同28.1%と高い伸びをみせたほか、食品とエネルギーを除くコア指数は同3.4%と伸び率が加速。冬の到来を控えて、一段と物価上昇圧力が強まるとの見方が広がっており、12月MPCでの利上げ実施観測を後押しした。
    一方、直近の為替市場では、こうした状況下でもポンド買いは限定的にとどまっている。対ユーロでは昨年2月以来のポンド高水準をつけているものの、対ドルでは11月MPC直前の1.36ドル台と比較してポンド安水準にとどまる。これは、11月11日に公表された7-9月期の英実質GDP(速報値)成長率の伸びが、前期比ベースでみて2021年初め以来の低水準となったためとみられる。英景気回復の勢いが鈍っていることから、BOEが利上げに慎重な姿勢を崩さないとの見方もくすぶる。また、12月MPC直前の12月14日には、11月の英労働統計発表が予定されており、市場の注目度は高い。12月MPCに向けて、ポンド相場が振らされる状況は続きそうだ。
TOP