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国内投信市場動向:国内債券投資に復権の兆しか

2021-11-15

■ 8-10月の国内投信市場動向でも、海外株式が選好される傾向に変わりはない

■ 主要先進国の金融引き締め傾向は、「安定性」の観点で国内債券への注目度を高めよう


   本稿では、8-10月の国内投信市場動向を振り返る。直近3カ月間の合計は、約2兆1400億円の資金流入超だった。単独の資産クラスでは、海外株式へ投資するファンドへの資金流入額が約1兆6500億円と、資金流入の大半が海外株式である傾向に変わりはない。一方、ここにきて国内債券型とバランス型ファンドへの資金流入額が、それぞれ約2500億円、約2000億円とやや増額している。まだ特筆すべき傾向ではないものの、ポートフォリオ運用の観点から、日本債券への注目度が高まる兆しと筆者は捉えている。

   金融引き締め観測が先進国にも波及し、世界的に金利上昇圧力が高まりつつある。確かに、新型コロナウイルス禍が拡大した昨年3月以降、主要中銀の金融緩和政策で抑えられていた債券利回りが上昇に転じたため、海外債券への投資妙味が高まったように見えるものの、投資にあたっては慎重な判断が求められよう。例えば、Bloomberg Barclays指数の主要債券指数で最終利回り(≒期待リターン)を参照すると、米国ハイイールド(以下、HY)社債は年初(4.18%)から直近11月5日(4.04%)まで、欧州HY社債は年初(3.08%)から直近(2.93%)まで、ともに小幅低下している。また、先進国投資適格(IG)社債は、年初(1.23%)から直近(1.57%)まで利回りは上昇したものの、主要先進国の本格的な金融引き締め局面は、これからと想定される。そのため、HY社債、IG社債にかかわらず、海外債券への投資では、今後利回り上昇(=債券価格下落)を覚悟する必要があろう。

   対して、日本債券市場は「安定性」の観点から、ポートフォリオ運用において相対的な注目度が高まるとみる。根本には日本銀行の強力な金融緩和姿勢があるが、他の先進国と比較して日本では統計上の物価上昇圧力は軽微にとどまっている。そのため、主要先進国と比べた金利上昇圧力は、相対的に小さな状況が続く見込み。加えて、海外株式への投資を進めた国内投資家にとって、円建債券への投資は通貨分散にも寄与する。直近の国内債券へ投資するファンドへの資金流入はそうした傾向の兆しかもしれず、注目したい。デメリットは海外債券と比べた期待リターンの低さだが、アクティブ型ファンドや社債への投資で補うことが想定されよう。

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