11月第3週の相場展望(11月15日~11月19日)
2021-11-15
米国PPI(卸売物価)が予想をやや上回り前月比0.6%の上昇、またCPIは前月比0.9%と予想の0.6%を大きく上回る伸びとなり、インフレ加速が明確に示された。加えてバイデン政権のインフラ投資の可決と30年債入札の不調が債券売りを加速させ、米国10年債利回りは1.4%半ばから1.59%程度まで一時上昇し、ドルの急反発を促した。ドル円は113円前半で下にあるストップ注文のハンティングをNYK勢は狙って売りを仕掛けていたと考えられ、CPIの指標発表後に売り方の買戻しも多く急上昇に繋がった。ユーロドルは、1.1520より下にあった損失覚悟の売り注文を次々と付けることとなり、1.1477まで下げた。金利に敏感なナスダック市場は263ドル安と大きく下げ、金価格は1820ドル付近から1870ドル近辺まで大きく上げるなどし、正にドル上昇相場が演じられた。その後もじりじりとドル高は進んでおり、米国債券市場が休場であった翌日の金曜日もさらなるドル高継続となっている。
金価格は昨年8月の高値2075ドルからの下落トレンドラインを上に抜けた。ドル安の要因も重なって久しぶりに大きな上昇幅となっている。25日移動平均線は上向き度合いが強くなり、これまでほぼ平行線を保っていた75日移動平均線も若干上向き方向へ変わってきた。今年8月の1682ドルを起点として始まった上昇は、9月の1833ドルで最初の上昇が終わって調整に入り1721ドルまで下落したあと反発となった。次の上昇波動では大きな上昇となる公算であり、1875ドル~1965ドルがターゲットとなろう。直近の上値目途としては、今年の高値である1880、1916ドルとなる。ただ今回の金の上昇はドルの上昇が貢献しており、その背景にある米国金利次第ということにはなり、10年債利回りは1.4%割れがサポートされやすく、週明けは1.5%半ばで先週後半から比較的安定した水準で落ち着きだしているが、今後もインフレの動向が金相場には影響を及ぼしてくるだろう。
金の日足チャート


直近の相場はほぼ米国金利の行方が左右している。1.43%まで下げた10年債利回りが1.5台半ばで落ち着いており、1.4%から1.7%の間でのレンジがしばらくの間は固まったように感じられる。パウエルFRB総裁は来年の2月で今期の人気が終了する。FRB委員であるブレイナード氏とのどちらかが来期の総裁として就任することがほぼ決定的となっているが、直近ボストン連銀のローゼングレン総裁とダラス連銀のカプラン総裁は、自身の金融投資がインサイダー取引に接触するのではないかということで、辞任をすると発表した。パウエル総裁自身の取引も疑いを持たれたことがあり、少し前までは交代も囁かれていたが、2人の辞任がFRBの総体的な責任を負う形となって事なきを得ているようだ。パウエル総裁+ブレイナード副総裁という形で時期FRBの枠組みが決定する方向となりそうだが、決定までまだわからない情勢だ。ブレイナード総裁はパウエル総裁以上にハト派(金融緩和推進派)という認識であるため、金利水準もやや低めを維持しているようだ。ブレイナード氏は民主党員であり、共和党系のパウエル総裁とは異なるため、総裁交代の可能性も未だ残っていることも低金利維持の背景となっている。もしブレイナード氏が新総裁となれば大きな金融政策はあまり変わらないとしても、市場は利上げの時期が現状の予測より遅れる可能性を鑑みるため、一時的に金利は下落しドル売り、株の上昇、金価格も上昇となろう。次期総裁は今月中にも決定する予定であり目が離せない。
今週は、米国でニューヨーク連銀製造業景気指数やフィラデルフィア連銀製造業景気指数に鉱工業生産の発表があり、中国や日本でも鉱工業生産の発表が相次ぐ。半導体不足からの悪影響がないのか吟味する統計が続く。英国では小売物価指数と消費者物価指数の発表があり、金利動向への影響があるのかどうかに注目していきたい。
今週は、米国でニューヨーク連銀製造業景気指数やフィラデルフィア連銀製造業景気指数に鉱工業生産の発表があり、中国や日本でも鉱工業生産の発表が相次ぐ。半導体不足からの悪影響がないのか吟味する統計が続く。英国では小売物価指数と消費者物価指数の発表があり、金利動向への影響があるのかどうかに注目していきたい。