欧州:新型コロナウイルス感染再拡大の兆し
2021-11-10
■ WHOは欧州の感染状況に警戒感を示す
■ ワクチンのブースター接種や経口治療薬への期待から、金融市場の反応は限定されるか
欧州で新型コロナウイルスの感染再拡大に対する警戒感が強まっている。5日時点の新規感染者数(7日平均)を確認すると、ドイツで23851人、ロシアで40107人といずれも過去最高を更新している。ポーランドなど中東欧でも感染が拡大しており、世界保健機関(WHO)のハンス・クルーゲ欧州地域事務局長は4日、欧州が新型コロナ感染再拡大の真の脅威に直面しているとし、今後3カ月で医療が逼迫する可能性があると危機感を示している。また、米国の新規感染者数は10万人を割り込んだ水準で下げ渋っているほか、世界全体では10月中旬の43万人台から5日には約48万人まで増加しており、感染再拡大の兆しが出ている。経済活動制限に至れば、景気下押し圧力が強まるおそれがあり、今後の動向を注視する必要があろう。
ただ、累計死亡者数はワクチン接種率が相対的に低いロシア(33.8%)や米国(57.2%)では着実に増加している一方で、イタリア(71.9%)、フランス(68.2%)英国(67.2%)、ドイツ(66.5%)では増加ペースが抑制されている。ワクチン接種の進展により重症化が抑えられているとみられ、追加接種(ブースター接種)が進展すれば、経済活動制限が改めて実施された場合でも厳格度はこれまでより低下することが期待される。
また、新型コロナ経口治療薬の開発が進んでおり、米食品医薬品局(FDA)は11月30日の会合で米製薬大手の治療薬に対する承認の是非を検討すると発表している。治療薬の普及により新型コロナウイルスに対する社会的な対応が一般的な感染症と同等のものとなれば、経済活動制限により金融市場が悪影響を受けてきた構図が一変することとなる。新型コロナ感染再拡大に対する金融市場の反応は時間の経過とともに限定されてきており、冷静に状況を見極めることが必要であろう。