米雇用統計レビュー:良好な結果だが、緊張感は一服へ
2021-11-09
■ 10月の米雇用統計は労働市場の改善を示したが、市場では投資家のポジション調整が優勢に
■ テーパリング開始直後で利上げ実施はまだ遠く、米雇用統計を巡る緊張感は一服へ
11月5日に米労働省が発表した10月の米雇用統計は、米労働市場の改善傾向を印象付ける結果となった。非農業部門雇用者数は、季節調整後で前月比53.1万人増と市場予想(同45万人増)を上回り、前月分も同19.4万人増から同31.2万人増へ上方改定された。ただし、政府部門は同7.3万人減と、前月(同5.3万人減へ上方改定)と同じく新型コロナウイルス禍とその後の回復状況において季節調整や雇用のパターンが歪められていることが示唆された。他には、失業率が前月の4.8%から4.6%へ改善したうえ、時間当たり平均賃金は前年比4.9%上昇と、前月(同4.6%上昇)から一段と伸びが加速した。今回の米雇用統計では、10-12月期に米経済活動の勢いを取り戻している経過が確認できる結果だったと整理できよう。
11月3日に米連邦準備理事会(FRB)は資産購入の段階的縮小(テーパリング)を開始し、今後の米労働市場の動向は、利上げ実施時期に関連した視点へ市場の注目が変わるとみられる。パウエルFRB議長は3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、「今は利上げ実施時期ではない」としつつも、最大雇用に達すれば物価動向もFRBの利上げ条件を満たす可能性があると指摘した。そして、最大雇用の達成時期を巡る質問に対しては、経済成長のペースが順調との条件付きだが2022年後半に達成可能と述べた。確かに、季節調整後の雇用者数は新型コロナ禍前の2020年2月時点と比べてもなお約420万人少なく、利上げ実施へは時間的猶予があると言えそうだ。そのため、来月以降は当面の間、米雇用統計の結果を巡る市場の緊張感は一服すると見込む。なお、今回の雇用統計発表後の金融市場の反応は、良好な結果だったにも関わらず米金利低下・米ドル安が進行し、投資家の持ち高調整の動きが優勢だったとみられる。