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「市場との対話」第1ラウンドを波乱なく通過

2021-11-08

■ 豪州、米国、英国は、金融政策正常化に向けて前進

■ 金融市場では早期利上げ織り込みの修正が進むが、中央銀行の見解とはなお乖離がある


   2-4日にかけて、豪州、米国、英国で金融政策決定会合が開催された。これら3カ国では、インフレ進行を受けて、金融市場では早期利上げを織り込む動きが強まり、中央銀行との間で認識の乖離が広がっていた*1。

   2日の豪中銀(RBA)理事会では、豪3年国債(2024年4月償還)利回りを0.1%に定める利回り目標の廃止を決定。2-3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、月額150億ドルのペースでの資産購入の段階的縮小(テーパリング)が決定された。両中銀ともに金融政策正常化に向けてコロナ禍での緊急対応を緩めたものの、目標達成に向けて「忍耐強く(patient)」対応する方針を表明し、政策金利引き上げには引き続き慎重な姿勢を示した。また、4日に結果を公表した英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)では、政策金利は据え置かれたものの、参加者9名中2名が政策金利の15bp引き上げを提案。資産購入プログラムについては、前回同様、3名が段階的縮小を主張した。物価安定のために今後数カ月間で利上げが必要となる旨を声明文に明記し、今後の利上げを強く示唆した。10月17日にベイリーBOE総裁が中期的な期待インフレ率上昇の抑制に向けた行動の必要性に言及し、利上げを示唆していたが、その後発表された9月の消費者物価指数で物価上昇ペースが鈍化したため、判断が保留された模様。3カ国いずれも金融政策正常化に向けて前進した一方、物価は来年後半には目標水準に収束する見通しを維持し、政策金利調整に関しては判断の余地を残している。

   金融市場では、直前まで続いていた早期利上げ織り込みが修正され、各国ともに2年国債利回りの上昇に歯止めが掛かっている。足元で物価高騰が続き、2022年前半まで高インフレが持続すると従前の物価見通しの修正が迫られるなか、市場との対話の第1ラウンドでは、大きな波乱を招くことなく織り込み修正に成功したと評価できる。ただ、物価認識には依然として乖離があるため、第2ラウンドとなる次回会合以降でも、利上げタイミングやペースを金融市場にどのように織り込ませていくのかは大きな課題になるだろう。

*1 詳細は PRESTIA Insight 「乖離が広がる中央銀行と金融市場の物価認識」(2021年10月23日)


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