News

ユーロ圏マクロ経済見通し

2021-11-04

■ 内需に陰りがみられ、4-6月期をピークに景気回復は一服

   ECBは利上げに対する慎重姿勢を継続

    ユーロ圏では、景気回復ペースの鈍化が一段と明確になった。製造業PMIは7月以降4カ月連続で低下しているが、最新データの10月(速報値、58.5)も高水準を保ち、回復モメンタムが鈍化するなかでも拡大基調が続いていることを示している。8月の鉱工業生産(前月比1.6%減)は前月の反動で大幅減少となり、生産水準はコロナ禍直前まで回復後、伸び悩んでいる。自動車などの耐久消費財の減少が目立っており、半導体などの供給制約の影響が強まっていることがうかがえる。また、サービス業PMIも8月以降3カ月連続で低下し、内需の回復ペースも鈍っている。特に9月(56.4)、10月(54.7)は大幅低下が続いており、経済活動再開による回復が一巡したことがうかがえる。8月の小売売上高(前月比0.3%増)も前月の大幅減少後の反動が小幅にとどまっており、基調的にも伸び悩みが明確になりつつある。

    28日の欧州中銀(ECB)理事会では主要政策は据え置かれたものの、理事会後のラガルドECB総裁の会見では、来年3月末に期限を迎えるパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)終了後の代替策を12月のECB理事会で協議することが明らかにされた。一部報道では、資産購入プログラム(APP)の規模拡大や補完プログラム導入などが候補に挙がっており、段階的に政策正常化が進みつつ、緩和的政策が長期化する見込みが高まっている。また、9月の消費者物価指数(前年比3.4%上昇)は上昇ペースが急加速し、ECBのインフレ目標を大幅に上回っているが、原材料価格高騰や供給制約により進行しているインフレに対しては、前年7月にドイツで付加価値税(VAT)が引き下げられた反動などを例示し、改めて一時的な現象であると見通された。政策対応には慎重姿勢を保っている。なお、ドイツ連銀のバイトマン総裁が12月末での退任を発表した。来年以降、金融政策正常化プロセスが進められる過程ではECBの意思決定に影響が及びうる。
TOP