News

日銀は現行の緩和策を継続、足元の円安を静観へ

2021-11-01

■ 日銀は現行緩和策の継続を決定した一方、2021年度の経済成長率・物価見通しを下方修正

■ 円の実質実効レートに具体的基準はなく、為替相場の安定的推移が重要との認識


   日銀は27、28日の政策決定会合で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和政策の継続を決定。消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大する方針も継続する。同時に公表した「経済・物価情勢の展望」では、2021年度の実質GDPの政策委員見通し(中央値)を前年度比プラス3.4%と7月時点(同プラス3.8%)から下方修正。コアCPIも0.0%とプラス0.6%から下方修正した。一方、供給制約により輸出・生産は一時的に減速するが、ワクチン普及などに伴う外需増加や政府の政策効果などに支えられ、成長ペースは鈍化しつつも潜在成長率を上回り続けると予想。足元の景気判断を据え置いた。
   黒田日銀総裁は足元の為替相場を「若干の円安」と位置づけ、日本経済にとって総合的にプラスであるとの認識を示した。また、「円安は原材料輸入比率が高い内需型企業の収益や家計の実質所得を押し下げるが、グローバルに展開する企業収益を押し上げ、賃上げや設備投資を積極化しやすくなる効果がある」と説明。2015年6月に同総裁が円安をけん制した実質実効レートの水準に接近していることから、一部の市場では円安けん制発言を警戒する向きもみられたが、「経済・金融のファンダメンタルズを反映し、為替相場が安定的推移することが最も重要だ」と述べ、足元の円安を静観する姿勢を示した。市場の関心は11月2、3日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)や雇用統計など米経済指標に移るが、ドル円は20日高値114円69銭を上値メドにドル高の調整局面を迎えよう。
TOP