「成長と分配の好循環」は実現可能なのか
2021-10-29
■ 世論調査によると、31日投開票の衆院選では、連立与党で過半数議席を維持する公算
■ 「成長と分配の好循環」実現は、分配面での企業と家計のトレードオフ解消が鍵となる
岸田政権は「成長と分配の好循環」の実現を掲げている。安倍・菅政権の「成長戦略会議」に代わる「新しい資本主義実現会議」の第1回会議が26日に開催され、デジタル・クリーンエネルギー技術を柱とする科学技術立国の推進、半導体分野などでの強じんなサプライチェーン構築などの経済安全保障の強化、官民連携による人への投資、などの項目が優先課題に挙げられた。11月上旬にも緊急提言案が取りまとめられる。一般論として、成長には投資が必要であり、その原資は内部留保より賄われる。したがって、成長と分配の両立に向けて、早晩、分配面で企業と家計のトレードオフに直面することが想定される。両者の好循環を促すためには、公的支援(補助金などのインセンティブ付与)が必要となる。民間の自助努力に委ねるのではなく、実効性向上のためにワイズスペンディング(政策効果の高い歳出)が求められる。
選挙後は、自民党が掲げる数十兆円規模の経済対策の策定に向けて、補正予算編成が進められる。連立を組む公明党が公約に掲げる18歳までの子供1人当たり一律10万円の現金給付などが検討されよう。一方で、岸田首相が分配政策の財源に挙げていた金融所得課税の強化は、株価急落などの金融市場の反応を受けて、当面凍結され、財源は定まっていない。発足以降、支持率が低迷する岸田政権では、増税など反対意見も強い財源調達への障壁は高く、大部分は予算組み替えや国債発行などにより賄われる可能性が高い。原材料価格高騰や円安によるインフレ加速が見込まれるなかでの国債増発に対して、今度は債券市場から信認が問われることになろう。