10月第5週(10月28日―11月1日)の相場予想
2019-10-28
<先週の動き>
先週は、英国EU離脱が中心テーマで動いた週であった。
週前半は、英国とEUが前週、新たな離脱協定案で合意をしたことでポンド買いにつながっていたが、議会内での反発で不透明さが台頭して、ポンドは反転下落となった。ポンドドル高値は5か月ぶりの1.30台、そこからの下落となった。週後半に離脱協定案を否決し、英国は10月末までの合意ではなく、3か月延期の案に向かっている。また米中貿易協議はニュースが少なく、期待感での株価堅調さ程度で、下落したポンド以外の為替相場は小動きで終始した。
<今週の相場展望>
英国EU離脱の不透明さを背景に金は直近安値の1470ドル台からじりじりと値を上げており、また米国フェースブックリブラの承認に反対意見が多い中、下落しているビットコインから動いた資金だろうか、金にリスクオフ資産が集中している可能性が高い。金は9月4日の高値から下落しており、そこから引いた下落トレンドラインを上に抜けていることで、しばらくは堅調な推移が予想される。その動きの要因となっている英国EU離脱は今週31日に迫っており、それ次第の動きとなるはず。ジョンソン首相は12月に総選挙を提案しており、喧騒の中で離脱延期の方向へ動いていきたいのではないだろうか。延期となればポンドはやや売り優勢となり、合意となれば上昇一途となるだろう。市場は合意の内容ではなく、まずは合意離脱か否かの選択に注目している。また合意となれば、長期ショートポジションの巻き戻しも期待され上昇幅は大きくなるだろう。
中国では、共産党全体会議が4日間の日程で開催される。早速会議前に昨日中国がデジタル通貨とブロックチェーンの推進を掲げたことで、ビットコインが20%以上上昇している。また会議では米国との貿易協議に関しての言及があるのか注目される。
(重要イベント等)
1)中央銀行金融政策
今週は、各国経済統計や日米中央銀行の金利政策委員会が開催される。中でも米国のFOMCと日銀金融政策決定会合は注目となろう。FOMCでは、前回に続き0.25%の利下げの予想であるが、先週S&P指数の一時史上最高値更新やダウ平均、ナスダックも市場最高値に近づいており、資産バブルへの懸念もあり、利下げがあるとしてもその後は様子見の姿勢になるのか、市場は金利決定後のパウエル総裁の記者会見にも注目が集まってくる。先週欧州中央銀行(ECB)は、来月から再開する資産購入プログラムについて、新たな施策として、キャピタルキーという加盟国の経済規模や出資比率に応じた買い入れ割り当てを導入し、今までよりドイツ資産の買い入れを増やす方針を示したことで、日銀も緩和への思惑が報道されている。また日銀金融政策決定会合も緩和への新案が少しでもなされるのか、円相場への影響の可能性が少なくない。変化なしということなら、若干円高へ振れそう。
2)英国EU離脱期限
大きな政治イベントは、31日(木)の英国EU離脱期限。選択肢は、
①離脱合意延期
②合意なき離脱
③合意離脱
の3択となってくると思われる。ポンド相場は①の場合はもみあい、②は下落、③は上昇と予想している。①の可能性が大きいかと思われるが、相場はどちらにも振れるのでポジションの量は絞っておきたいところ。
3)経済指標
経済指標でも水曜日にフランスと米国のGDPと米国ADP雇用統計があり、FOMCが控える。市場はあまり注目してはいないと思うが、ドイツの雇用統計は遅行指数とはいえ、経済悪化懸念の中の数字には注意しておきたい。木曜日には欧州のGDPと中国製造業PMI、米国個人消費、金曜日には、英国PMIと米国ISM製造業景況指数と雇用統計。今週は中心テーマの英国EU離脱が目立つが、重要な経済統計も多いので注意が必要。
通貨保有ポジションから見ると、先週火曜日まで一週間でポンドの売り越しポジションが減少している。大きなイベント前での整理が進んでいるようだ。若干円の売り越しが増えていて、今後も継続するのかどうかは円相場を読む一つのヒントとなってくるだろう。全般には、米中貿易協議の進行期待でドル買い持ちが増えている印象がある。好調な企業決算を背景に上昇し、史上最高値付近の米国株を睨んで、本当に利下げが継続するのか、今後の金融政策の方向性を示す発言等への理解や分析は今後のドル相場理解につながってくるはず。
(相場全般)
直近では、世界的に上昇している株、ドル、昨日より急騰しているビットコイン、ポジション調整が進んで堅調さを取り戻した金、銀、原油。世界的にマネーの供給が行き場をなくして、リスク資産へも流れ込んでいる市場を見ていると金余りの様相を呈しており、これは先進国の金融緩和からの思恵である。この流れはまだ始まったばかりであり、英国EU離脱と米中貿易協議の合意の期待がこの動きを加速させる可能性は否めない。世界の先進国中銀は、自国の景気後退も視野に入れ、巨大バブルを作らないよう最大限の注意を払う必要があると思っている。バブル崩壊の受け皿とみなされる新興国群はまだ受け止めるほど、強固な経済基盤ではないのだから。米中がこれ以上に経済競争を進めていくと、バブルは異常に膨れ上がる可能性だけは忘れてはならない。リーマンショックから10年、日本のバブル崩壊から30年、アジア各国では、バブル崩壊の経験のない市場関係者が増えてきたのも心配の種ではある。