英ポンド:急速な利上げ観測の高まりが話題に
2021-10-21
■ 10月入り後の英ポンド高は、物価上昇圧力を受けた英中銀の利上げ観測が背景にある
■ 新型コロナ感染再拡大の動向に注意が必要だが、来年にかけて英ポンド高は継続を見込む
10月に入って以降、英ポンド高が顕著だ。英ポンドドルは9月29日安値(1.3410ドル)を底に、10月19日高値(1.3833ドル)まで約400pips上昇した。また、英ポンド円は円安傾向の強まりも相まって、10月1日安値(149円21銭)を底に10月19日高値(158円05銭)まで約9円の英ポンド高・円安に。英ポンド円の158円台回復は、Brexitを巡る国民投票が実施された2016年6月以来だ。本稿では、英ポンド高の背景と見通しについて整理したい。
英国では今年7月19日に、新型コロナウイルスの感染抑制を目的とした経済活動制限を完全に撤廃した。これは、2020年3月23日に都市封鎖を開始して以降、初めてだった。その後、経済活動が再開されるなかで、物価上昇圧力が顕著になっている。9月15日に公表された8月の消費者物価指数は、食料品やエネルギーを除いたコア指数の上昇率が前年比3.1%と、7月分(同1.9%)から大幅に上昇し、BOEの物価目標(同2%)を上回った。また、10月20日に公表される9月分の市場予想は同3.0%と、物価上昇圧力は維持される可能性が高い。
そうしたなか、ベイリーBOE総裁は10月17日に、足元のエネルギー価格高騰は物価上昇圧力の長期化を招く可能性があり、その場合にBOEは高い期待インフレ率に対応する必要があると述べた。その結果、短期金融市場では次回11月4日開催の政策会合(MPC)で0.25%への政策金利引き上げや、来年にかけて複数回の利上げ決定を織り込む動きが確認されている。先んじて、9月にBOEのチーフエコノミストに就任したピル氏も、物価上昇の長期化に対する懸念を表明しており、BOEは利上げ実施へ向けた地ならしを始めたと市場では解釈されている。これら一連の動きが、英ポンド高につながっているとみる。次の上値メドは、英ポンドドルが節目であり今年6月17日以降の高値でもある1.40ドルちょうど付近、英ポンド円は2016年6月高値(160円62銭)付近とみており、来年にかけてこれらの水準への上昇を見込んでいる。
一方で、悪材料としては、足元で英国内の新型コロナ新規感染者数が7月以来の高水準へ増加していることが挙げられる。10月19日に英国政府の報道官は、冬の到来を控えるなかで直近の「入院患者数の増加と死亡率の上昇」傾向を認めた。目先は、新型コロナ関連の続報や短期的な過熱感もあって、変動幅の拡大に注意が必要と考える。