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中国経済:意図的な減速から意図せざる減速へ

2021-10-19

■ 中国では、電力不足、過剰債務問題が浮上し、生産、固定資産投資の減速が継続

■ 政策的な景気抑制から意図せざる景気減速へ様相が変わり、政策の軌道修正が求められる


    10月に公表予定の中国の主要経済指標が概ね出揃った。本日発表された7-9月期の実質GDP成長率(前年比4.9%上昇)は急減速し、4四半期ぶりの低成長にとどまった。同時に発表された9月の経済指標では、小売売上高(同4.4%増)の減速に歯止めが掛かる一方、鉱工業生産(前年比3.1%増)、固定資産投資(農村部除く、年初来同7.3%増)の増勢鈍化が続いている。深刻な電力不足により生産調整が迫られたことや、過剰債務問題に伴い不動産投資が抑制された影響が表れている。その他指標では、輸出(前年比28.1%増)は欧米向けが伸びたため前月より増勢が加速したものの、アジア向け輸出は低迷。輸入(同17.6%増)も9カ月ぶりの低い伸びにとどまり、アジアでの交易活動の低迷や中国の需要低迷が示唆されている。一方、消費者物価指数(同0.7%上昇)と生産者物価指数(同10.7%上昇)の上昇率の乖離は、データの遡及が可能な1996年以降で最大となっている。製造加工業が原材料価格の高騰を吸収している状況が続いており、製造業の苦境が続いていることを示唆する。
   中国経済の現状は、政府が意図的に推進した景気抑制から、意図せざる景気減速に様相が変わりつつある。7、8月は中国政府が大企業や富裕層に対する規制・取り締まりを強化し、経済は政策的に引き締められてきた。9月に大手不動産開発業者で過剰債務問題が表面化したため、今後は債務削減(デレバレッジ)が進められ、不動産投資は中期的に抑制されることが見込まれる。また、脱炭素政策による火力発電抑制が電力不足につながっている。10月には、石炭の主要産地である山西省での大規模な洪水発生や、中国政府が電力不足への対応として12日に火力発電の電力価格自由化を発表したことを受けて、火力発電燃料となる石炭需給がひっ迫し、石炭価格が急騰している。豪州からの石炭輸入を停止していることも状況悪化に拍車を掛けている。これらの結果、電力不足がさらに深刻化し、工場などでの電力需要が管理されている模様。原料価格の上昇とともに、生産や固定資産投資の調整が続き、スタグフレーションが一段と進行することが見込まれる。供給制約や先進国での金融政策正常化を含めて経済環境は悪化しており、経済を軟着陸(ソフトランディング)させるためには、政策の軌道修正の必要性が高まっている。
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