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日本株:割安感が強まるが、企業業績動向には警戒

2021-10-18

■ 海外投資家の売り買いによる株価の大幅な上下動は一巡

■ 割安感が強まるものの、中国の景気動向が本邦企業業績に及ぼす影響を注視


   日経平均株価は8月末から10月上旬にかけて、3000円超の上下動をこなした。その動きを演出したのは海外投資家である。海外投資家の売買動向(現物先物合計)を確認すると、9月第1週(8/30—9/3)から第3週(9/13-17)にかけて1.96兆円買い越しており、9月14日にピークを付けた株高を演出した。その後は9月第4週(9/20-24)から10月第1週(10/4-8)にかけて2兆円超売り越しており、株価は急騰前の水準に回帰した。自民党総裁選への菅首相の不出馬を契機に、新政権による経済政策や河野太郎氏による構造改革・世代交代への期待を強め、欧米株対比での出遅れが目立っていた日本株を積極的に買い越す動きを強めた。その後、岸田首相の誕生をきっかけにそれまでの動きを逆転させ、一気に売り抜けた格好となっている。海外投資家の売り買いによる株価の大きな上下動は一巡したと思われる。

   日米欧株価の年初来上昇率(14日時点)を確認すると、米S&P500株価指数は約18%、ストックス欧州600指数は約17%となっているが、日経平均株価は4%と出遅れ感が強い。一方で、同期間の予想株価収益率(PER)は米(22.6倍→20.6倍)、欧(17.5倍→15.7倍)、日(21.8倍→17倍)と、日本株の予想PER低下が顕著で、割高感の解消では先行している。衆院選を経て新政権の政策の実現可能性が高まれば、相対的な割安感も相まって、海外投資家の日本株買いを促す可能性がある。
   一方で、企業業績の動向には警戒姿勢を解けない。日経平均株価の予想一株当たり利益(EPS)は急速な回復局面から安定的な拡大局面に移行しつつあるとみられ、業績改善への期待が株価を下支えする力はこれまでより弱まる公算が大きい。また、日本の企業業績は中国の景気動向と相関性が高く、同国の景気減速懸念は日本株を強く下押しする恐れがある。その場合のひとつの下値メドとして、日経平均株価が今年下げ渋る傾向が強い株価純資産倍率(PBR)1.2倍の水準付近にあたる26800円程度が挙げられよう。
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