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世界経済:曲がり角に差し掛かる

2021-10-14

■ IMFは2021年の世界経済の成長率見通しを引き下げた

■ 一方で物価上振れへの警戒を強めており、経済環境は曲がり角に差し掛かっている

    国際通貨基金(IMF)は12日、最新の「世界経済見通し(World Economic Outlook)」を公表した。2021年の世界経済の成長率は直近の7月時点から下方修正(6.0%から5.9%へ引き下げ)された。景気回復基調は変わらないものの、世界的な新型コロナウイルス感染再拡大、供給網の混乱により回復ペースは従来よりも緩やかになる。また、インフレの長期化、金融政策正常化の前倒し、米国の債務上限問題や中国不動産セクターの過剰債務問題に起因す る金融市場の混乱、などへの警戒を強め、見通しに対する不確実性は従前より高まっていることを認めた。世界経済の成長モメンタムは、コロナ禍以降の復調から明確に鈍化している。
    対称的に、物価見通しに関しては上振れリスクが高まっていると指摘された。2021年末にインフレがピークに達し、2022年半ばにはコロナ禍以前の水準へ収束することをメインシナリオとしているが、世界的な供給網の混乱による需給バランスの悪化、原材料価格高騰が長引く場合、持続的なインフレが実現し得ると警告している。中長期のインフレ期待が安定しているため、足元のインフレを一過性の現象と認識し緩和的な金融政策を継続する先進国の中央銀行の姿勢には理解を示しているものの、上記要因により中長期のインフレ期待にも上昇の兆候がみられる場合は、雇用回復を犠牲にしてでもインフレ抑制を優先させる厳格な姿勢・意思を示すことを求めた。
    ここ数カ月で経済環境は変わり、コロナ禍以降、初めて大きな曲がり角に差し掛かっている。前年のパンデミック時の積極的な財政・金融緩和により、景気の底割れは回避されたが、その副作用が形を変えて表面化し始めている現象と整理できる。経済活動再開による景気の急回復フェーズを通過し、今後は、政策支援が徐々に縮小するなかで各国の経済の実力が問われる局面に移行していくと認識を改める必要があろう。
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