ロシア株:エネルギー資源価格上昇が好材料に
2021-10-11
■ 足元のロシア株は好調だが、エネルギー資源価格上昇が予想EPSの上昇をもたらしている
■ 他方、悪材料としては(1)ロシア中銀の利上げ継続と(2)米国との対立に注目が必要だろう
本稿では、主要新興国の一つであるロシア株式市場を巡る材料を整理する。米国の金融引き締めや世界的な物価上昇懸念など、新興国市場を取り巻く環境は相対的に悪化へ向かっている。そうしたなか、ロシア株式市場は好材料を背景に、底堅い推移が見込まれる。
直近のロシア株式指数(Moex Russia Index 以下、同指数)は、年初来騰落率が+28.5%(10月7日時点)と新興国の中でも好調さを維持、10月に入り再び過去最高値を更新している。こうしたなか、同指数の12か月先の一株当たり予想利益(EPS)は、同じ期間に54.1%増と、株価上昇率を超える増加率を記録。MSCI指数の新興国地域別指数のうち、ロシア一国で約3分の2を構成する欧州新興国指数は今年、他のアジアや南米地域に比べて良好さを維持しているが、こうしたロシア株式市場の動向が寄与している。
直近では、世界的なエネルギー価格の上昇が世界の金融市場の懸念となっているが、ロシア市場にとっては好材料となり得る点が大きい。2019年時点で世界のエネルギー消費量上位は石油(33.1%)・石炭(27.0%)・天然ガス(24.2%)だが、いずれもロシアの主要輸出品目であり、ロシアの「燃料・エネルギー製品」の割合は6割に達している(2019年時点)。輸出相手国の上位は、電力不足が続く中国(13.5%)や、卸売ガス価格が10月6日に一時過去最高値を更新したオランダ(10.6%)のほか、ドイツ(6.6%)・トルコ(5.0%)である。また、ガスプロム(国営天然ガス会社)とロスネフチ(国営石油会社)は合計でロシアGDPの1割以上を占めるなど、ロシアにとってエネルギー資源価格上昇はプラス材料と言えよう。
他方、悪材料では(1)ロシア中銀の利上げ継続と、(2)米国との対立、に注意が必要とみている。(1)では、今年2月以降ロシア中銀は計5回の利上げを実施し、政策金利を6.75%まで引き上げている。加えて、10月7日に同中銀副総裁は2016年半ば以来となる物価上昇率を記録している状況を踏まえ、10月22日の次回会合での利上げ実施を示唆した。(2)では、10月5日に一部の米上院議員が、ロシア外交官300人の追放をバイデン大統領に求めた。対抗措置として、翌6日にロシア外務省は、米国でのロシア外交使節の閉鎖につながると警告した。(1)は物価高と景気減速のスタグフレーション、(2)は米ロ対立の深刻化につながる可能性があり、注意が必要だろう。