原油先物価格(WTI)は高止まりの可能性
2021-10-06
■ 原油需要は順調な伸びが見込まれている
■ 投資不足などによる供給の伸び悩みがWTIを下支えする可能性
原油先物価格(WTI)は8月後半に一時1バレル61ドル台後半に下落した後に上昇基調を強め、4日には一時78ドル台前半に達した。リスク資産と認識されるWTIは株価と連動する傾向が強いが、S&P500株価指数は9月以降下落に転じており、逆行高となっている。
石油輸出国機構(OPEC)の9月月報によれば、世界の2021年の原油需要は前年比6.5%増と、堅調な伸びが予想されている。こうしたなか、各国が発電燃料を石炭や石油よりも温暖化ガスの排出が少ない天然ガスに切り替える動きを強めていたが、ロシアからの天然ガス供給が伸び悩んでおり、欧州の天然ガス価格が急騰。中国では石炭供給が減少し電力不足に陥っていることも相まって、目先の安定的な電力供給に向けて原油需要が強まるとの見方が強まり、WTIを下支えしている。
供給面では投資不足の影響が指摘されている。米国では、WTIが現在と同水準にあった2018年10月頃の原油採掘リグの稼働数は860-870基だったが、10月1日時点で428基と遠く及ばない(出所:ベイカーヒューズ)。ダラス連銀調査によれば、2018年以降の新規シェールオイル油井開発の損益分岐点は50ドル前後で推移しており、リグ稼働数の伸びの鈍さは環境負荷が高いシェールオイル生産に対する投資不足を示唆している。また、OPEC加盟国とロシアなど非加盟産油国からなるOPECプラスは4日、協調減産を11月も日量40万バレル縮小、すなわち現状から増産する方針を確認した。ただ、OPECプラスのなかでも、ナイジェリアやアンゴラなど一部の参加国では、複数年にわたる投資不足や、新型コロナウイルス感染拡大の影響で大規模な保守作業の遅れが響き、ここ数カ月は増産に苦慮している様子がうかがえる。需給両面の要因が複合的に下支えする構図となっており、WTIは高止まりする可能性がある。