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英国金融政策(9月MPC)変更なし-労働市場を取り巻く不確実性に焦点

2021-09-27

■    正常化へ向けた動きがさらに進展

■   現行の金融姿勢を維持することが適当だと判断した


   イングランド銀行の今回のMPCでは、金融政策の変更はなかった。ただし、正常化へ向けた検討がかなり進められていると見られる。実際、今回のMPCでは声明文や議事要旨において、インフレ率に関する評価が多く、インフレリスクと金融引き締め姿勢への転換について多くの議論がなされており、「生産力余剰の解消と、2%のインフレ目標の安定的達成への著しい進展についての明確な証拠が得られるまでは、金融政策を引き締めるつもりはない」というガイダンスも声明文から削除された。
    議事要旨からは金融政策を決定するにあたって、雇用の状況についての評価が難しいことも明らかになっている。雇用の評価は景気判断にもインフレリスクにも直結するため重要な論点といえるが、英国ではEU離脱といった要因もあって、労働力不足から経済指標上は求人率が上昇し人手不足感が高まっている一方で、政府の雇用維持政策の利用者がイングランド銀行の想定よりも多いという状況が発生している。
今回、金融政策の維持を主張した多数の委員は、雇用環境について不確実性が多いため、景気要因による雇用の弛み(slack)が残っているのか、構造的なミスマッチが生じているのかを判断するためにも雇用維持政策(CJRS)が終了する9月以降の情報を得るまで待つべきとの意見を主張した。
   一方、9人中2人の委員はインフレリスクが高まり、急速に金融引き締めを行うことによる経済の急激な変化を避けるためにも、現時点で資産購入の縮小をすべきと主張した。なお、金融政策の維持を主張した多数派は仮に金融引き締めを行うとしても、年末まで予定している現行の資産購入策は続けた上で政策金利を引き上げるべきであると主張しており、インフレリスクが増した際の正常化の方法についてもMPC内で見解が分かれていることも明らかになった。

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