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中国の過剰債務問題は、長期戦となる可能性も

2021-09-22

■ 過剰債務問題を巡り、中国当局は「金融システム崩壊は招かない」方針を堅持と推測する

■ 投資家が動きにくい9月末が間近であり、市場に不透明感が広がりやすい状況は継続の見込み


    本稿では、現時点の情報を前提としたうえで、中国の不動産開発大手を巡る過剰債務問題(以下、本問題)について、中国当局の方針を検討したい。結論を先に記せば、本問題を巡り中国当局は、「中国の金融システム崩壊を招かない」という方針は堅持するとみられる。ただし、個別企業の支援を狙った積極的な介入は手控え、原則は企業の自力による立て直しを求めるだろう。そのため、中国の金融市場が大混乱に陥る可能性は低いと想定するものの、世界の機関投資家が動きにくい9月末が間近であることも相まって、当面の間、金融市場には不透明感が広がりやすい状況は継続するとの見立てだ。
   中国当局の方針は、次の2点に求められるとみている。1点目は、本問題のきっかけが昨年12月末に当局自身が規制強化に動いた点にある。この時、中国当局は不動産セクターへの銀行融資に上限を設けた。具体的には今年1月から導入された制度で、不動産開発業者向けの貸し出しを、大手の国有銀行で貸付残高の40%に制限した。その結果、中国では本問題の企業を含む不動産開発企業の多くが、資金繰り難に陥っている。つまり、本問題のきっかけを作った中国当局が現在に至る状況を想定してない可能性は低いとの認識だ。
   2点目は、8月17日に開催された中国共産党中央財経委員会・第10回会議に注目したい。この会議では習近平国家主席が重要講話を述べたほか、李克強首相など最高幹部の共産党中央政治局常務委員が多数参加した。その会議では、「共同富裕」実現の研究と「重大な金融リスクの予防緩和」が議題とされ、本問題の関連では後者が該当する。「共同富裕」に比べて注目度は低い議題ではあったが、システミックリスクを解消し、二次金融リスクを防止しなければならない、などの当局の見解が表明された。
   報道では、本問題の当該企業の負債総額は約2兆元(約33.4兆円)とされ、中国当局が経済の大混乱を招くことは許容しないとみる。現時点で筆者は、今年8月に国有企業連合に事実上救済された、国有の不良債権受け皿企業を巡る動向を後追いし、時間をかけながら鎮静化が図られると想定する。ただし、本問題が社会不安を誘発した場合は中国当局が方針を変更する可能性もあるため、今後の事態について、追加報道に注目する必要があるだろう。
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