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中国経済:スタグフレーションの様相が強まる

2021-09-17

■ 中国では景気減速と物価高騰が同時進行し、スタグフレーションの様相が強まる

■ 景気下支え役としての政策期待は根強いが、今後は、2015年同様、政策への信用が問われそう


   15日に発表された8月の中国主要経済指標は、鉱工業生産(前年比5.3%増、前月比0.31%増)、小売売上高(前年比2.5%増、前月比0.17%増)、固定資産投資(農村部除く、年初来同8.9%増、前月比0.16%増)ともに、前月比ベースでは7月の急減速からやや持ち直し、減速ペースは和らいでいるものの、前年比ベースでは増勢が鈍化し、景気減速が続いていることが示された。世界的な半導体不足、中国政府の鉄鋼減産命令などにより生産が抑制され、新型コロナウイルス感染拡大に伴う厳格な行動制限により個人消費も低迷した。金融統計でも、人民元建て新規融資(前年比12.1%増)がコロナ禍以降最も低い伸びにとどまり、経済活動の停滞が示唆されている。一方で、生産者物価指数(同9.5%上昇)の上昇ペースには歯止めが掛からず、消費者物価指数(同0.8%上昇)との乖離は拡大。9日に中国政府は原油の戦略備蓄放出を発表するなど価格高騰への対応を進めるものの、小売価格安定を企図する政策的歪みが拡大しており、規制強化と合わせて企業経営を圧迫している。財新PMIは8月に製造業(49.2)、サービス業(46.7)ともに好不況の基準となる50を割り込む水準まで急低下し、企業の景況感は急速に冷え込んでいる。


    中国政府は8月以降も企業、高所得者層への規制・統制を強め、情報技術(IT)、娯楽などを対象に新たな規制の導入が続く。不動産規制強化を引き金として、複数の不動産開発業者で債務不履行懸念が広がり、悪影響が表面化している。中国人民銀行は金融市場での資金供給を増加し、大手銀行に対して承認済の住宅ローンや不動産融資の実行を急ぐよう指導するなど、信用不安予防への対応を進めるが、金融リスク抑制の方針は堅持している。


   中国では、景気減速と物価高騰によりスタグフレーションの様相が強まっている。景気急変時の下支え役として政府・中央銀行の政策期待は根強いが、構造改革を優先する姿勢に現時点では変化はみられない。政策の舵取りは難しくなっており、2015年のチャイナショック同様、政府・中央銀行の政策への信用が問われることになるとみている。
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