News

ECB理事会プレビュー:金融緩和姿勢の継続を見込む

2021-09-08

■ 9月のECB理事会では、(1)PEPPの今後と(2)直近の物価上昇を巡る議論に注目

■ PEPPはAPPを含めた総合的な判断、足元の物価上昇は新たな物価目標などとの整理が重要に

   本稿は、9月9日に結果が発表される欧州中銀(ECB)理事会の注目点を確認する。注目点は(1)パンデミック緊急債券購入プログラム(PEPP)の今後と、(2)直近の物価上昇を巡る議論、とみている。9月理事会で、ECBは改めて金融緩和姿勢の継続を示すと見込む。
   (1)は、来年3月の終了予定を巡る議論に注目したい。PEPPの購入枠は総額で1兆8500億ユーロの方針だが、今年8月27日時点で1兆3250億ユーロまで枠が埋まった。残りの購入枠を来年3月までの月額平均で計算すると、約750億ユーロとなる。一方、今年4月以降の4カ月間は、月額平均が約821億ユーロまで増加していた。来年3月までPEPPを続ける場合、「単月の購入額を減らす」か「購入枠の総額を増やす」措置が必要となる。よって、単に「単月の購入額を減らす」決定だけで、ECBが金融引き締め姿勢に転じたと評価するのは早計と言えよう。もし、新型コロナ禍の悪影響が来年も継続することになれば、PEPPの終了と同時にAPPの購入額を一時的に増やす可能性も残る。通常の資産購入プログラム(APP)と合わせたECBの資産買い入れ方針を、総合的に判断する必要があると考える。
   (2)は、ECBが7月に改定したばかりの物価目標とフォワードガイダンスとの関係に注目したい。直近のユーロ圏物価指標は、8月の消費者物価指数(速報値)が前年比3.0%上昇、7月の生産者物価指数が同12.1%上昇と、物価上昇圧力が強まっている。一方、ECBは7月に物価目標を「中期的に上下対称な2%のインフレ率目標」に、フォワードガイダンスを市場予想以上に金融緩和的と解釈される文言に、それぞれ改めたばかりだ。ECB内で「物価上昇は一時的」の解釈で意見集約を図れるか、その議論を追う必要がある。ただ、9月理事会で示されるECBスタッフによる経済予測で、2023年まで前年比2%以下の物価見通しが維持されれば、金融緩和姿勢は継続と解釈できよう。
    米連邦準備理事会(FRB)が資産購入の段階的縮小(テーパリング)に踏み込むとの思惑に合わせて、ECBの金融政策姿勢を巡る金融市場の注目度は高い。しかしながら、現時点でFRBに比べてECBが金融引き締めへ遅れている感は否めず、ECB理事会後にいったん足元のユーロ高は一服する可能性が高いとみている。
TOP