米国:8月雇用統計の評価
2021-09-07
■ 雇用の伸びは鈍化したが、単月の下振れを懸念する必要はなかろう
■ 今後は労働市場のかく乱要因が浮上するため、雇用情勢の慎重な見極めが必要
3日に公表された8月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比23万5000人増と前月から伸びが大きく鈍化し、市場予想(同72万8000人増)を下回った。製造業など生産活動は引き続き活発で、財生産部門は同4万人増と堅調を維持した。一方、高い伸びを示してきた娯楽・宿泊・飲食業が新型コロナウイルスの感染再拡大で横ばいとなり、サービス部門は20万3000人増にとどまったほか、州・地方政府の教育関連雇用が26万4000人減少し、政府部門は8000人減少した。新型コロナウイルスの感染再拡大の影響が色濃く、雇用の伸びが抑制されたと評価される。なお、非農業部門雇用者数の前月比増加幅は、6月が2万4000人、7月が11万人、それぞれ上方修正され、3カ月平均で75万人と高水準を維持している。単月の下振れを懸念する必要はなく、資産買い入れの段階的縮小(テーパリング)の開始時期に関する市場の想定が大きく変化したとは考えにくい。
今後は、9月6日に失業保険の特例給付や延長給付が打ち切られ、求職者数の増加が見込まれるほか、8月終わりから9月初めにかけてのハリケーンの襲来など、労働市場のかく乱要因が浮上する。8月雇用統計の下振れが一時的なものか、これまで以上に慎重に見極める必要があるだろう。