テーパリング開始のタイミングを見通すうえで
2021-09-02
■ 8月の米雇用統計では、NFPの伸びは鈍化するものの、堅調な結果が市場では予想されている
■ 引き続き、経済指標のみならず、FRB当局者の市場へのコミュニケーションを注視すべき
米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の段階的縮小(テーパリング)に踏み切るタイミングを占ううえで、9月3日に米労働省が発表する8月の米雇用統計に注目が集まる。現時点の市場予想によれば、非農業部門雇用者数(NFP)は6月の前月比93.8万人増、7月の同94.3万人増に続いて同75.0万人増に伸びが鈍化するものの、民間部門雇用者数は同70.0万人増と、7月の同70.3万人増とほぼ同水準の伸びが見込まれている。また、失業率は6月の5.9%、7月の5.4%に続いて5.2%まで改善すると見込まれており、市場予想通りの結果となれば、最大雇用に向けて着実に前進していると判断できよう。
しかし、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長はこれまで、量的緩和の段階的縮小(テーパリング)を開始する際には事前に十分な余裕を持って通知すると強調してきた。事前通知がどのような形式なのかは不透明であるが、同議長は8月27日のジャクソンホール会議における講演で、テーパリングの開始時期について「7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、私も年内が適切になるとみていた」と述べたうえで、「雇用回復は力強さを増したが、新型コロナウイルスの感染が拡大した」と懸念材料を指摘。米国内での新規感染者数や死亡者数の増加に歯止めがかかっていない現状を踏まえれば、その発言を事前通知と解釈するのは難しいだろう。年内のテーパリング開始はほぼ市場に織り込まれたとみられるが、具体的なタイミングを見通すうえでは、引き続き、経済指標のみならずFRB当局者の市場へのコミュニケーションを注視する必要があろう。