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景況感悪化で米株安への警戒感を強める必要はなかろう

2021-09-01

■ ISM製造業景況感指数は低下基調に転じたが、高水準を維持

■ 50を大きく上回る水準にある限り、米株安への警戒感を強める必要はなかろう


    9月1日に8月の米ISM製造業景況感指数(以下、ISM)が公表される。ISMはGDPの前年比伸び率との連動性が高いことから景気転換の先行指標とされ、その変動に対する市場の解釈により株価が上下に振れることがある。しかし、景気動向を見極めるうえでは、方向性だけでなく水準も併せて観察し、正しいシグナルを読み取ることが重要だ。9月1日に公表される8月分は58.7と、7月(59.5)から低下すると市場では予想されている。3月(64.7)からの低下基調が維持され、景気のピークアウトを示唆することが読み取れる。一方、景気拡大・縮小の境目とされる50を大きく上回る水準を維持しており、景気後退が意識される状態からは程遠いことが理解できる。
    1985年以降に景気後退局面は4回あるが、そのいずれの場合でも直前のISMは50を下回っていた。しかし、50を下回った場合でも、景気後退を伴わないケースもあった。ISMが50を下回った時点から6か月後のS&P500株価指数の平均騰落率をみると、景気後退がない場合にはプラス9.5%、景気後退を伴う場合ではマイナス11.6%と、大きな格差が生じている。ISM指数は前月との比較を問う形式の調査であり、通常は60を上回るような高水準が持続することはない。しかし、現状は新型コロナ禍から経済が復元する過程にあり、通常の景気サイクルとは異なる。供給制約が足かせとなっているものの鉱工業生産は増勢基調を保っていることから、ISMの低下ペースは緩やかになることが見込まれる。50を大きく上回る水準が維持される限り、株安への警戒感を本格的に強める必要はなかろう。
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