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FRBのテーパリング年内開始は、ほぼ織り込まれた

2021-08-31

■ 今後の注目点は、FRBの利上げ実施時期を巡る議論に移るとみられる

■ 現時点で大半のFRB高官は利上げ実施に慎重姿勢を示し、米金利の急上昇は想定しづらい


   今年のジャクソンホール会合では、8月27日に実施されたパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演に注目が集まった。同議長は年内に資産購入の段階的縮小(テーパリング)を開始すると示唆した一方、最終的に利上げを決定する際の慎重姿勢を維持するとした。金融市場ではFRBが金融引き締めを急がないとの思惑が広がり、米国株高・米金利低下・米ドル安と、一般的に金融緩和が進む際の反応をみせている。

   すでに8月4日にクラリダFRB副議長が年内のテーパリング開始を示唆して以降、多数のFRB高官が同じような見解を表明していた。8月27日もパウエルFRB議長の講演に前後する形で、大手メディアでのインタビューなどで、クラリダFRB副議長、ウォーラーFRB理事、アトランタ地区連銀総裁、クリーブランド地区連銀総裁らが年内のテーパリング開始に言及した。そのため、今回のパウエルFRB議長の講演を経て、金融市場にはFRBの年内テーパリング開始が、ほぼ織り込まれたとみて良いだろう。前回のテーパリングは2013年12月に開始して以降、2014年10月に完了したことを踏まえると、今回は2022年内のテーパリング完了が、当面の金融市場における想定の基本線になるとみられる。
   米金利市場での今後の焦点は、利上げ実施時期となる見込み。パウエルFRB議長の講演を受けて、フェデラル・ファンド(FF)金利先物市場では、2022年内の利上げ実施確率は低下している。また、パウエルFRB議長をはじめ、年内のテーパリング開始を支持するFRB高官の間でも、大半が「テーパリング実施時期と利上げ開始時期の議論は別」とし、利上げに慎重な立場を表明済だ。そのため、米10年国債利回りが足元で一気に2%台へ急上昇するような事態(≒テーパー・タントラム)が起こる可能性は低い見込み。目先の注目は9月3日公表の8月米雇用統計だが、米労働市場の回復が順調と示された場合でも米金利上昇は限定され、米5年国債利回りは0.8%台後半、米10年国債利回りは1.4%台が目先、利回りの上値メドになるとみている。
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